熊谷守一の風景画に焦点を当てた展覧会が豊島区立熊谷守一美術館で開催!

熊谷守一と言えば、自宅の庭に生息する動植物を題材にした作品でよく知られていますが、彼は実際には多くの風景画を残しており、その旅行での体験が多くの作品に生かされています。この展覧会では、そんな熊谷守一の風景画にスポットを当てた展覧会となっています。

熊谷守一と豊島区立熊谷守一美術館

熊谷守一は、明治時代から昭和時代にかけて活躍した画家で、音楽や機械など、絵画以外の分野にも深い興味を持ち、これらの分野から得た知識を絵画の基本要素である「色彩」と「形態」の研究に活かしました。

熊谷は、伝統的な技法にとどまることなく、絵の本質的な構成要素を自分なりに深く追求することによって、独自の表現スタイルを開拓しました。


湖畔山羊 /1950 (昭和25) 年 / 油彩・板 熊谷守一つけち記念館蔵

豊島区立熊谷守一美術館は、熊谷が45年間にわたって暮らした家およびアトリエがあった場所に建てられ、彼の芸術と人生を現代に伝える重要な施設です。この美術館は、彼の二女である熊谷榧(かや)によって1985年に開館され、その後2007年には豊島区の運営に移行しました。

常設展示では、彼の作品約60点が公開されており、これらを通じて熊谷の芸術的な発展や変化を辿ることができます。また、彼の作品は自然や身近な生き物への深い愛情と、それらを題材にした際のユニークな視点や技術の理解を深める貴重な資料となっています。

本展覧会のみどころ

彼の晩年、自宅と庭で過ごすことが多かったとして知られていますが、それまでの長い間、日本のさまざまな土地を旅し、見た風景を作品に反映させていました。東京美術学校在学時の徒歩によるスケッチ旅行から始まり、樺太での写生、昭和初期の二科技塾での塾生との写生旅行、そして戦後も続けた仲間とのスケッチの旅など、熊谷の足跡は日本中に広がっていました。

76歳で脳卒中に見舞われてからも、かつて訪れた風景のスケッチや記憶を基にした作品制作を続け、再現することで、新たな創作活動を展開していきました。熊谷の作品には、日本の自然や風土が深く息づいており、彼が旅から受けたインスピレーションが色濃く反映されています。


秋元湖 /1957 (昭和32) 年 / 油彩・板 熊谷守一つけち記念館蔵


山道 /1961 (昭和36) 年 / 油彩・板 熊谷守一つけち記念館蔵

「熊谷守一美術館39周年展 守一、旅を描く。」では、計約100点の熊谷作品が展示されます。これには、岐阜県中津川市付知町にある「熊谷守一つけち記念館」からの貸出品である油彩作品19点と関連資料1点、そして豊島区立熊谷守一美術館所蔵の約80点の作品が含まれています。


朝の富士 /1957 (昭和32) 年 / 油彩・板 熊谷守一つけち記念館蔵


仁右衛門島 /1951(昭和26) 年 / 油彩・板 熊谷守一つけち記念館蔵

本展では、熊谷の画業を通じた変遷を示すものから、特に、彼の旅に関連する作品の展示を通じて、熊谷の多面的な創作活動と、彼が旅から受けたインスピレーションの深さを探ることができます。また、5月8日と6月8日には、学芸員によるギャラリートーク(申込不要、特別展チケット必要)も開催予定しています。

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