入試科目の多様化
入試科目においても時代による変化は進んでいます。
親世代の頃の入試科目は「算数・国語・理科・社会」の4科目入試か、「算数・国語」のみの2科目入試が主流でしたが、いまや「算数1科目入試」や「国語1科目入試」、「算数・国語・理科・社会」の4科目の中から2科目を選択できる入試、「英語」を選択できる入試など、その種類は多岐にわたります。
また2013年から「思考力入試」を導入している聖学院中では、レゴブロックを使う「ものづくり思考力入試」が有名です。
受験者達はまず「最高の食事」をレゴブロックで表現し、その後作品を作文で説明したり、資料を参考に解答するという入試がおこなわれました。
宝仙理数インターでは「読書プレゼン入試」という入試が実施され話題となりました。
これは事前に提出した調査書を基に自分の好きな本について試験官にアピールするというものです。
宝仙理数インターではこれ以外にも多種多様なプレゼン入試をおこなっています。
一方で私立中学校の側も迷走してしまっているケースもあります。
たとえば藤村女子中で2021年からおこなわれていた「ナゾ解き入試」は、謎解きイベントなどを展開する企業SCRAPの協力により実現し話題を呼びましたが、残念ながら廃止されてしまいました。
3年間やってみて中学入試の選抜方法としては適切ではないという判断が下ったのでしょう。
たしかに「ナゾ解き」は思考力を問うツールとしては決して不適切なわけではないとは思いますが、それなら別にイベント的にしなくとも、たとえばGoogleやAppleの入社試験のようなテストをペーパーでおこなえば事足りるでしょう。
変わったのは受ける側?
入試制度の変化や選抜方法の多様化、難易度の変遷など、中学受験の今と昔で変わったことは確かにあります。
しかし、冒頭にも述べたように、「読解力」や「思考力」をきちんと備えている生徒が欲しいという私立中学側の思惑は大きく変わっていないように感じます。
私が受験した年の第一志望の算数で出題された問題は、いまだに中学受験用テキストに載っていますし、冒頭で紹介したきつねそばの問題も多くの問題集に採用されています。
最近は思考力を問う問題のほかに、記述問題が増えたという話もよく言われますが、武蔵中の国語は、私が受験した当時からほぼ記述問題でした。
もちろん、学校によってさまざまではありますが、中学受験の本質は実は変わっていないとみるべきでしょう。
では何が一体変わったのか。
私は受験生の側・受験生の保護者の側こそが「変質した」と考えています。
たとえば、子ども達の読解力。
これは多くの記事で何度も書かせていただきましたが、現代の子たちは本当に読解力が低下しているように感じます。
上位層はさほど変化はないように感じますが、中堅層や下位層の読解力は著しく低下しているように思います。
語彙力が低いため自分の考えを表現するのも苦手なうえ、たとえばこちらがある出来事に関する意見を求めても、こちらの質問の意図をくみ取ることができずトンチンカンな答えをしてしまうということもよく見られます。
小学校で「思考力を養う教育」をするのはいいのですが、思考力の礎となる読解力や知識力といった基礎学力をないがしろにした結果、なんだか中途半端な子がたくさん産みだされてしまっているように感じます。
配信: マイナビ子育て