"たかが数百円"で「懲戒免職」は重すぎる? コンビニコーヒー「R買ってL注いだ」公務員たちの罪

"たかが数百円"で「懲戒免職」は重すぎる? コンビニコーヒー「R買ってL注いだ」公務員たちの罪

●必ずしも「懲戒免職処分=退職金不支給」ではない…支給制限を取り消した判決も

——兵庫県の市立中学校の校長は、懲戒免職処分だけでなく退職金も不支給とされています。この点はどのように考えますか。

細かな事情がわからないので何とも言えませんが、中学校の校長という職責ある公務員の非違行為です。窃盗行為の発覚による生徒への影響など社会的な影響も大きいといえるので、熊本市職員のケースと比べると、懲戒免職処分を争うのは難しい面があると思います。

ただし、仮に懲戒免職処分が適法であるとしても、ただちに退職金(退職手当)の全額不支給まで適法ということにはなりません。通常、懲戒免職処分がなされると、退職手当支給制限処分(全額不支給処分)も併せてなされますが、両者は別個の行政処分です。

したがって、被処分者(校長)としては、両方の処分を争うことも、退職手当支給制限処分のみを争うことも可能です。

懲戒免職処分は適法としつつも、退職手当支給制限処分は違法であるとして、後者のみを取り消している過去の裁判例もあります。

退職手当支給制限処分も、行政側には一定の裁量が認められています。

しかし、退職手当には、勤続報償としての性格のみならず、賃金後払いや退職後の生活保障としての性格もあるのですから、今回発覚した窃盗行為だけで、退職手当を全額不支給としてしまうことは、個人的には重すぎる処分のように思います。

ただし、近時の最高裁判決は、県立高校の教諭が酒気帯び運転で物損事故を起こしたケースについて、退職手当全額不支給処分を適法と判断していますので、その点は注意が必要です。

【取材協力弁護士】
岡田 俊宏(おかだ・としひろ)弁護士
1980年生まれ、栃木県出身。早稲田大法学部卒。2009年弁護士登録(東京弁護士会)。日本労働弁護団常任幹事(元事務局長)、東京弁護士会労働法制特別委員会委員(公務員労働法制研究部会部会長)。労働事件(民間・公務問わず)に注力。

関連記事:

配信元

弁護士ドットコム
弁護士ドットコム
「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。