他候補者に「おい売国奴」拡声器で罵声、「凸」と称して迷惑行為も…東京15区補選で何が起きているのか

他候補者に「おい売国奴」拡声器で罵声、「凸」と称して迷惑行為も…東京15区補選で何が起きているのか

●犯罪ではない? 候補者を出しているが故「無敵の人」状態に

このように、結成当初とは様変わりしてしまったつばさの党だが、彼らがやっている選挙妨害は犯罪にはならないのか。

これは公職選挙法225条に「選挙の自由妨害罪」というものがあり、候補者に暴行を加えたり、交通や集会、演説を妨げたりした場合には4年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金と定められている。

警視庁が18日に出した公選法違反の警告は、この条文によるものと見られる。

一方でつばさの党の候補者らは警告を出された後も選挙妨害を繰り返しており、それに対して警察も対応に苦慮する事態が続いている。

というのも、この選挙自体につばさの党の根本氏が立候補しているため、彼らは候補者や応援弁士による演説として拡声器などを使うことが認められているのだ。   それでも他候補の演説を妨害すれば公選法違反になるのだが、警察は捜査が選挙に影響を与えないよう、選挙期間中は候補者に対する強制捜査や立件を控える傾向がある。

こうしたことも見越してか、黒川氏は警告を受けて城東警察署内でノートを投げるなど暴れまわり、その様子もYouTubeにアップしている。一般人であればすでに逮捕されていてもおかしくないのだが、候補者を出しているが故にもはや「無敵の人」となっているわけだ。滅茶苦茶である。

●民主主義が一部の暴走した人たちによって破壊されかねない

このような事態について、ついに国会でも議論の俎上に上がった。

22日、衆議院予算委員会で国民民主党の田中健衆院議員が選挙妨害について「候補者の演説を聞きたい有権者の権利も奪うことになり、民主主義の危機。何らかのルールが必要だ」と取り上げ、岸田文雄首相は「何らかの対策が必要ではないか、問題意識は共有する。各党各会派で議論すべき課題だ」と答弁した。

今後、選挙妨害に対してより機動的に対応できるようにするため、公職選挙法の改正なども議題となっていくかもしれない。

現在は好き勝手な行動をとり続けているつばさの党だが、選挙が終われば警察が捜査を本格化させる可能性もある。

選挙で各候補者が何を訴えているのかを知るために、有権者が街頭演説を聞きに行く、こうした当たり前の活動を守っていくためにも、警察は常軌を逸した選挙妨害を厳しく取り締まっていく必要があるだろう。

民主主義が一部の暴走した人たちによって破壊されないためにはどうすれば良いのか、根本から考えることが求められている。

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