雪舟の国宝6件すべて公開。なのに雪舟展ではない『特別展 雪舟伝説―「画聖」の誕生―』開幕

もしも等顔と等伯がいなかったら


雪舟筆《国宝 四季山水図巻(山水長巻)》室町時代 文明18年(1486) 毛利博物館蔵

このように、雪舟は画家たちの間で画風が継承されただけでなく、世間に広く知られる有名人にもなりました。キーパーソンとなったのが、画風を継承し再生させた、雲谷等顔や長谷川等伯です。

ここにも興味深いポイントがあるように思います。実は雪舟には多くの弟子がいたのに、画系は長くは続きませんでした。一方、雪舟と会ったこともない等顔と等伯が雪舟流を受け継いだのです。


長谷川等伯筆《竹林七賢図屏風(右隻)》桃山時代 慶長12年(1607) 京都・両足院蔵 通期展示

もしも等顔と等伯がいなかったら、現在の日本美術はまったく違うものになっていたのではないでしょうか。雪舟の影響もさることながら、等顔や等伯が果たした役割も非常に大きいように思います。

また、雪舟の画系が長く続かなかったのはどうしてなんだろう、と想像するのも面白いのではないでしょうか。教えるのは下手だったんかな、とか……(根拠のない私の勝手な想像です!)

巡回なし・京都のみの貴重な展覧会


展示風景

さて、ここまでに掲載した写真や作品の画像から薄々感じている方がいらっしゃるかもしれません。なんだか似たような作品が多いな、と……。

現代人の目には落ち着いた作品が多く、たしかに写真では違いが分かりにくいかもしれません。しかし、ぜひ生で見ていただきたいんですね……!


雪舟筆《国宝 秋冬山水図》室町時代(15世紀)東京国立博物館蔵 通期展示

雪舟の作品の前に立つと、絵の中に吸い込まれそうな感じがします。墨の濃淡や印象的な線で作り上げられた豊かな世界に、誰もが驚くことと思います。

本展は巡回なし・京都のみの開催です。雪舟の国宝6件が揃うとともに、雲谷等顔、長谷川等伯など日本美術を代表する数々の画家の名品が見られる貴重な機会です。

ぜひ京都を訪れて、雪舟伝説に浸ってくださいませ。

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