任意整理と差押えの関係とは? 回避や解除の方法まで弁護士が解説

任意整理と差押えの関係とは? 回避や解除の方法まで弁護士が解説

「任意整理をしたら、給料や預金を差押さえられるの?」

「差押えを受けてしまったけれど、任意整理をすれば解除できるのかな?」

このような疑問や不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、

任意整理をすることによって差押えを受けることはあるのか
すでに差押えを受けている場合に任意整理で解決できるのか
差押えを解除してもらうためにはどうすればよいのか

などについて解説していきます。

1、任意整理で差押えを回避できる?

借金の返済を滞納していて、債権者から「差押え予告通知」といった郵便が届くと、「すぐに何とかしなければ、差押えを受けてしまう!」と焦ってしまうことでしょう。

では、任意整理をすれば差押えを回避できるのでしょうか。

また、すでに差押えを受けている場合は、任意整理をすることで差押えを解除してもらえるのでしょうか。

以下で、順にご説明します。

(1)差押え前に任意整理を開始した場合

まず、差押えを受ける前に任意整理を開始した場合は、担保を提供しているかどうかによって結論が異なります。

① 通常はほとんど差押えの心配はない

担保を提供していない場合は、任意整理をすれば差押えを心配する必要はほとんどありません。

任意整理は、債権者と交渉することによって返済額や返済方法を変更するものの、返済することを約束する手続きです。

ほとんどの貸金業者は、この交渉に応じてくれます。

和解が成立すれば、差押えを受けることはありません。

任意整理したことを理由として貸金業者が急に裁判を起こすこともありません。

ただし、稀にですが任意整理に応じない貸金業者もいます。

そのような貸金業者は滞納期間が長引くと裁判をして差押えをしてきます。

また、任意整理に応じる貸金業者でも、和解できないまま長期間が経過すると、裁判をして差押えをしてくるところもあります。

したがって、任意整理を開始して債権者からの督促が止まっただけで安心せず、できる限り早期に和解することも大切です。

② 担保が付いている場合は差押えを受ける

一方で、担保が付いている借金の場合は、任意整理をしても差押えを回避することはできません。むしろ、任意整理をすると差押えを受けてしまいます。

なぜなら、担保とは契約どおりに返済ができなくなった場合に備えて債権者に差し出しているものだからです。

例えば、マイホームに住宅ローンを利用している金融機関の抵当権が付いている場合、任意整理を申し出ればマイホームが差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。

また、ローンで購入した車には、完済するまでは「所有権留保」という担保が付いているのが通常です。

そのため、任意整理を申し出ると債権者が所有権に基づいて車を引き揚げ、売却して代金を返済に充当します。

また、クレジットカードで購入したものについても、クレジット代金を完済するまで所有権留保が付いていることがあります。その場合も、任意整理を申し出ると商品を引き揚げられて、売却されることがあります。

(2)差押え後に任意整理を開始した場合

結論として、いったん差押えを受けてしまうと、その後に任意整理を開始しても差押えの解除に応じてもらえることはほとんどありません。

債権者としても、手間と費用をかけて督促状の送付、一括返済の請求、裁判といった手続きを踏んでいます。その後に債務者が任意整理で「分割で返済します」と申し出ても、債権者にとっては差押えを解いてまで交渉に応じるメリットはありません。そのため、すでに受けた差押えを任意整理で解除してもらうのは難しいといわざるを得ません。

したがって、任意整理で差押えを回避するには、早期に対処することが極めて重要といえます。

2、任意整理前に担保付き資産の差押えを受けた場合の対処法

担保付きの借金でなければ、早期に任意整理をすることで差押えを回避することが可能です。

では、担保付きの借金についてはどのように対処すればよいでしょうか。

(1)差押え予告通知が届いた段階

担保付きの借金でも、差押え予告通知が届いた段階で適切に対処すれば、差押えを回避できる可能性があります。

担保権を有する債権者は、担保がない借金の場合と異なり、裁判をしなくても担保物件を差し押さえることが可能です。

ただ、実務上の手順として、債権者は担保権を有していてもいきなり差し押さえるのではなく、債務者に返済を促すための最終通知として「差押え予告通知」を送付してくるのが通常です。

この時点で、担保付きの借金以外の借金を任意整理することも可能です。

任意整理では、自己破産や個人再生とは異なり、どの借金を整理するか自由に選べるからです。

他の借金を任意整理することで返済の負担を減らし、担保付きの借金を遅れながらでも返済していけるのであれば、差押えを回避できます。

もっとも、差押え予告通知が届いてから一定期間が経過すると、実際に差押えを受けてしまいます。

したがって、この方法で差押えを回避するためには、差押え予告通知が届いたらすぐに他の借金の任意整理を開始した上で、担保権を有する債権者にも連絡して返済方法を相談する必要があります。

いつ差押えが行われるかは差押え予告通知に記載されていますが、おおむね1か月ほど先であることが多いでしょう。

任意整理を弁護士や司法書士に依頼すると、いったん返済をストップできますので、担保付きの借金の返済がしやすくなります。

(2)実際に差押えを受けた段階

実際に担保物件を差し押さえられた後は、任意整理をしても差押えを解除してもらうことはできません。

しかし、全額を一括で返済できれば差押えは解除されます。

この方法で差押えを解除するには、担保物件が売却されてしまう前に対処する必要があります。

マイホームが差し押さえられた場合は、債権者が競売を申し立ててから買い受け人が現れるまでに半年前後の期間がかかるのが通常です。

その間にローンの残高を一括返済できれば、マイホームを維持することができます。

車やクレジットカードで購入した物を引き揚げられた場合は、売却されるまでに2~3週間ほどかかることが多いようです。

ただし、1週間ほどで売れてしまうケースも少なくありませんので、早急に対処すべきでしょう。

関連記事: