任意整理と個人再生はどちらが良い? 違いと選び方を弁護士が解説

任意整理と個人再生はどちらが良い? 違いと選び方を弁護士が解説

「債務整理で借金を減額したいけれど……任意整理と個人再生はどちらが良いのかな?」

このように迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、

任意整理と個人再生の違い
任意整理と個人再生の選び方
任意整理と個人再生は切り替え可能か

などについて解説していきます。

1、任意整理と個人再生はどう違う?まずは両者の特徴を知ろう

任意整理と個人再生の違いが理解しやすくなるように、まずは両者の特徴をそれぞれ確認しておきましょう。

(1)任意整理の特徴

任意整理は、債権者と直接話し合うことによって今後の返済額や返済方法を変更し、和解した内容に従って分割返済していく手続きです。

裁判所を介しないため手続きはそれほど複雑ではなく、多くの人が利用可能です。

法定の手続きではないので、柔軟な形で解決を図ることも可能となっています。

一方で、原則として将来利息のカットしか認められないため、借金の大幅な減額は期待できないという特徴もあります。

(2)個人再生の特徴

個人再生は、裁判所の手続きを利用して借金を減額し、残った借金を分割返済していく手続きです。

民事再生法という法律に従って厳格かつ複雑な手続きが予定されているため、任意整理よりも利用対象者が絞られます。

その一方で、借金の大幅な減額が可能なので、多額の借金を抱えたケースでも完済を目指せます。

法律上の要件を満たせば裁判所の決定によって強制的に借金が減額されることも個人再生の特徴です。

2、任意整理と個人再生の具体的な9つの違い

それでは、任意整理と個人再生の違いを具体的にみていきましょう。

両者の主な違いは、以下の9つです。それぞれ比較しながら解説していきます。

(1)借金減額の効果

任意整理では、将来利息のみがカットされるケースがほとんどです。

元金のカットは交渉次第ですが、原則として応じてもらえません。

和解するまでの経過利息と遅延損害金についても、以前はカットされるケースが多かったのですが、最近は原則としてカットされなくなっています。

個人再生では、元金・経過利息・遅延損害金を含めた「借金総額」に応じて、最大で次の表の金額にまで減額されます。将来利息はカットされます。

借金総額

最低弁済額

100万円未満

借金総額

100万円以上~500万円未満

100万円

500万円以上~1500万円未満

借金総額の5分の1

1500万円以上~3000万円未満

300万円

3000万円以上~5000万円未満

借金総額の10分の1

もっとも、個人再生には「清算価値保障の原則」というものがあり、最低弁済額を上回る財産を所有している場合には財産総額に相当する金額を返済しなければなりません。

例えば、借金総額が300万円なら最低弁済額は100万円ですが、預貯金・車・生命保険その他で合計200万円の財産を所有している場合は、200万円を返済しなければならないということです。

(2)手続きの方法

任意整理では、債権者と電話や手紙で直接話し合って合意を目指します。

必要書類は特にありませんが、場合によっては債権者から収入証明書や家計表などを求められることもあります。

個人再生では、裁判所に申立てを行い、民事再生法の定めに従って財産調査や債権調査、再生計画案の認可などが行われます。申立てを行うには数多くの書類が必要となります。

(3)利用できる条件

任意整理は法定の手続きではないので、利用条件は特に決まっていません。

ただ、「安定収入があること」「返済を継続すること」という2つの条件を満たさなければ任意整理に失敗する可能性が高くなります。

個人再生では、上記の2つの条件に加えて、「破産に準ずる経済的困窮状態にあること」「借金総額が5,000万円以下であること(住宅ローンを除く)」という条件が法律で定められています。

(4)解決までにかかる期間

任意整理では、債権者との交渉にかかる期間が1か月~6か月程度、和解後の返済期間が3年~5年程度です。

交渉次第では5年を超える長期の返済期間が認められることもあります。逆に、3年未満の短期の返済期間で和解することも可能です。

個人再生では、申立てから返済開始までの手続きにかかる期間が6か月程度、その後の返済期間は原則として3年、最長で5年となっています。

(5)利用するためにかかる費用

任意整理では、手続きそのものにかかる費用は郵送料や電話代といった実費のみです。

弁護士に依頼する場合は、1社あたり5万円程度の費用がかかります。その他に「減額報酬」として借金を減額できた金額の10%程度が必要となる事務所もありますもっとも、最近では任意整理で元金を減額できるケースは少なくなっています。

個人再生では、裁判所に納める費用として数万円、個人再生委員に支払う報酬として12万~25万円程度かかります。弁護士に依頼する場合は、30万~50万円程度の費用がかかります。マイホームを維持するための「住宅ローン特則」を利用する場合には、弁護士費用が5万~10万円ほど加算されることが多くなっています。

(6)財産があるとどうなるか

任意整理では、財産を処分する必要はありません。

ただし、ローンやクレジットカードで購入した物については、完済していなければ債権者に引き揚げられる可能性があります。

個人再生の場合も、財産を処分する必要はありません。

ただし、高価な財産がある場合には、先ほどご説明した「清算価値保障の原則」により、返済額が増える可能性があります。ローンやクレジットカードで購入した物については、任意整理の場合と同様、債権者に引き揚げられる可能性があります。

なお、個人再生では「住宅ローン特則」の要件を満たせば、住宅ローンが残っているマイホームを残すことができます。

(7)保証人に影響はあるか

任意整理では、手続きの対象とする借金を自由に選べます。保証人付きの借金を除外して任意整理をすれば、保証人への影響はありません。

個人再生の場合は、「債権者平等の原則」により、すべての借金を手続きの対象としなければなりません。

したがって、保証人付きの借金がある場合に個人再生を申し立てると、保証人が残額の一括返済を請求されてしまいます。

(8)ブラックリストに登録される期間

任意整理でも個人再生でも、手続きを行うとブラックリストに登録されます。しかし、登録期間は任意整理で5年、個人再生で10年とされています。

任意整理の場合、債権者によっては「和解成立から5年」のこともありますが、「完済から5年」としている債権者も少なくありません。したがって、完済から5年と考えておく方が無難です。

個人再生の場合は、「再生計画案の認可決定の確定が官報に掲載されたときから10年」です。簡単にいうと、返済開始の前月から10年と考えておくと良いです。

(9)バレずに手続できるか

任意整理も個人再生も、家族や勤務先その他周りの人に内緒で手続きをすることは可能です。

ただ、個人再生の方がバレる可能性は高いといえます。任意整理では、基本的に必要書類もなく、手続をしたことが公表されることもありません。

一方、個人再生では必要書類として「退職金見込額証明書」を勤務先で発行してもらわなければならないことがあります。

しかし、就業規則や賃金規程で計算できる場合は発行不要ですし、発行を依頼する場合でも勤務先には「資産形成の件で税理士に相談するので」などと言えばバレずに済みます。

個人再生をすると「官報」に氏名と住所が掲載されますが、一般の人が官報を見ることはまずないので、そこから周囲の人にバレることはほとんどありません。

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