「直腸がんのステージ3」の症状・治療法はご存知ですか?医師が監修!

「直腸がんのステージ3」の症状・治療法はご存知ですか?医師が監修!

直腸がんは大腸の肛門に近い部分にできるがんです。徐々に進行して、周辺のリンパ節に転移した段階がステージ3で、さまざまな症状が出始めます。

ステージ3は進行がんとされ、手術治療が適用される段階です。5年生存率がステージ3を境に大きく変わるため重要なポイントになります。

このステージ3の直腸がんに関して、特徴や症状・治療の方法などを解説します。気になる症状がある方は参考にしてください。

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監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

直腸がんとは?

大腸がんのうち、直腸にできる悪性腫瘍が直腸がんです。大腸は結腸・直腸・肛門管・肛門で構成される管状の臓器で、各部位にがんが発生します。結腸にできれば結腸がん、直腸にできれば直腸がんで、それらの総称が大腸がんです。
大腸がんは結腸の終端部・S字結腸と直腸に多く発生します。腸壁の構造は、内側の粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜(しょうまく)下層・漿膜の5層構造です。がんはまず粘膜に現れ、進行に伴い粘膜下層から漿膜の方向に浸潤(しんじゅん=浸みるように広がる)していきます。

直腸がんのステージ 3の特徴

がんは進行性の病気で、病巣の広がりや進行はステージ(病期)で表示されます。直腸がんの場合は以下の5段階です。

ステージ0:がんが粘膜に留まる

ステージ1:がんが固有筋層に留まる

ステージ2:固有筋層を越える

ステージ3:深さを問わずリンパ節に転移

ステージ4:他臓器へ転移

この後はステージ3の状況を詳しくみていきます。

ステージ3はリンパ節への転移がある状態

ステージ3は、腸壁への浸潤度合いに関わらず、腸管の周辺にあるリンパ節にがん細胞が到達した状態です。
直腸の周辺には栄養や酸素を運ぶ動脈があり、それに沿ってリンパ節があります。こういったリンパ節への転移状況は、ステージ3をさらに細かく分類するための指標です。腸管周辺のリンパ節への転移数が3個以内であればステージ3aで、4個以上では3bに分類されます。

ステージ3aの5年相対生存率

3個までのリンパ節への転移が認められたステージ3aでは、5年相対生存率(直腸がん以外の死亡者を除外した数値)が73%です。
すべてのがんの平均で44%なので、直腸がんは生存率が高いがんになります。生存率はステージが進むにつれて下がる傾向です。ステージ1では90.6%、ステージ2では83.1%と徐々に下がります。もう1ランク上のステージ3aでも病巣が腸壁と近隣にとどまる状態なので、切除などで対応しやすく生存率も高いレベルです。

ステージ3bの5年相対生存率

ステージ3bになると、5年相対生存率は53.5%と一気に下がります。リンパ節への転移状況は、腸に向かう動脈の起点にある主リンパ節に到達した段階です。
ここから他臓器への転移が始まる前段階になります。ステージ3bでリンパ節も含めてがんを取り切れば、再発抑制も可能です。しかし、それができず他臓器への転移に進んだ場合は、ステージ4になり根治が難しくなります。つまり、ステージ3bはその後の展開を左右する重要な分岐点です。

ステージ3の再発率

大腸がんでステージ3までなら、多くの症例で手術が可能で完治も望めます。しかし、残念ながら再発の可能性も残されています。大腸癌研究会の調査では、大腸がんの切除後に再発した率は以下のとおりでした。

ステージ1:再発率5.7%

ステージ2:再発率15.0%

ステージ3:再発率31.8%

※ステージ4では基本的に手術できないためデータなし
病巣の位置が限定的なステージ1での切除手術でも再発があり、ステージが上がるにつれて再発率が高くなる傾向がみられます。ステージ3では30%を超える再発率です。

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