●育児でパパのホルモンバランスにも変化がある?
産後のホルモンバランスの変化や育児への不安など、母親が産後うつになる要因はさまざま。男性は、育児・家事と仕事とのバランスがうまく取れずに追い込まれるケースが多いのではないだろうか。しかし、「それだけではないかもしれない」と国立成育医療研究センターの竹原健二さんはいう。
「育児に関わることにより、男性も育児期に適応すべくホルモンの状態にも変化があるのではないかと考えています。海外では検証が始まりつつあるものの、まだ十分なエビデンスがあるとは言える段階ではありません。『妻の出産や育児によって男性のホルモンに影響がないというエビデンスはない』というのが現状です」(竹原さん 以下同)
母親が大変だからといって、父親が「育児や家事がつらい」と口にしてはいけないということはない。しかし、「パパがママをサポートしてあげないと」と言われてしまえば、何も言えなくなってしまう。男性のホルモンバランスの変化に確証が得られれば、つらさを訴えやすくなるかもしれない。
●理想は短期の育児休業よりも週に1、2回の定時退社を
政府は2020年までに、男性の育児休業取得率を現状の2.65%から13.0%に引き上げると発表している。育児休業を取得できれば、育児に携わる時間を捻出できる。パパの負担は減るのだろうか。
「私は、現在の男性の育児休業取得には反対です。育児休業の日数を見てみると、取得した人のうちの4割が5日未満、6割が2週間未満と極めて短期間でしかないからです。例えば、5日間なら、出生届を出しにいく、おむつなどの買い出しに行く、産婦人科に迎えに行くなどで終わってしまいます。多少の家事・育児はできると思いますが、そのわずかな日数を獲得するのに、会社で心苦しい想いをする人もいるでしょう。育児休暇明けには、今まで通り仕事に励む日々が始まってしまう。これでは、短期間しか育児に取り組めなくなってしまいます」
育児は、長期スパンで取り組むこと。短期間の育児休暇を取得するよりも、働き方を変えて行く方が現実的なのかもしれない。竹原さんは、「週に1〜2日、定時退社ができることを3年間保証してくれる制度」を提唱する。
「もし週に1、2回定時で帰れることがあらかじめわかっていれば、夫婦で夕食を一緒に食べられる機会も増えるでしょう。父親にも心の余裕が生まれるので、妻の育児に関する悩みや不満を聞くこともできます。食後は赤ちゃんを風呂に入れたり、食器を洗ったり、父親が家事・育児に携わる時間ができる。お母さんの負担も軽くなり、いいサイクルが生まれると思います」
こうした生活スタイルが当たり前になれば、パパはもちろん、ママのメンタルケアにもつながり、子育てしやすい環境が生まれるだろう。
(畑菜穂子+ノオト)