そんなボヤキをお母さんたちの口からときどき聞く。
子どもが朝なかなか起きないことは、親にとっては頭痛の種だ。しかも、「単に怠けているだけ」と思われがちだが、起きられない本人も悩み、傷つき、苦しんでいることが多々あるという。
同志社大学赤ちゃん学研究センター教授で、「子どもの睡眠と発達医療センター」センター長の小西行郎先生は言う。
「子どもの睡眠と発達医療センターは開院から9年目になりますが、朝起きられないことに悩む子どもの患者は多く、年々増えています」(小西先生)
なぜ朝起きられない子が増えているのだろうか。
「朝起きられない原因にはまず、環境の問題があります。例えば、夜中にお母さんが子どもを連れ回していることや、塾やスポーツなどの習い事で帰宅時間が遅いこと、ゲームやインターネットをしていることなどから、夜寝る時間が遅いのです」
起きている間に眠くなる代謝産物が脳内に蓄積してくる。これが一定の値になると眠くなり、眠ることクリアランスされるというのが、眠気が起きるメカニズムだ。
もうひとつのメカニズムは、体内時計が一日の中で眠くなるタイミングを決めているというもので、体内時計の睡眠のタイミングと生活の中の就寝のタイミングが合わないと、不眠の原因となる。
「また、個人差もあります。生まれてすぐの赤ちゃんにも、なかなか寝ない子がいて、大きくなるにつれていったん改善するものの、9~10歳くらいに再び寝なくなることもあるのです」
実は個人差、環境の問題を含め、後に不登校になる子の約6割が、幼い頃に重度の睡眠障害を持っていることもわかっているそう。
●遅い夕食から始まる悪循環が、後々にも影響する!?
中高生になってから影響が出ることを考えても、幼い頃の睡眠は非常に重要といえる。
「小学校の先生がよく『せめて夜10時には寝ましょう』と言いますが、それでは遅すぎますよ。夜9時には寝るべきです。夕食はできれば夜7時くらいには食べ終わっているようにしないと、胃腸の活動が活発になり、眠れなくなります。すると、体内時計が狂い、自律神経の乱れを引き起こすのです」
とはいえ、共働き家庭が多いいま、夜7時までに夕食を済ませるのは現実的に難しい面もあるだろう。だが、そうした事情も踏まえ、小西先生は警鐘を鳴らす。
「『塾が』『スポーツが』『仕事が』などは、すべて言い訳でしかありません。親が自分たちの生活リズムを中心にしてしまっているツケが、子どもの健康に影響を及ぼしてしまっているのです」
日々仕事や家事・育児に追われていると、つい子どもの夕食時間も寝る時間も遅くなってしまいがち。だが、子どもがもし昼間もウトウトしたり、眠くなったりしている場合には、睡眠障害の可能性があるようだ。
子どもが朝も昼も、いつでも「眠い」と言っているとしたら、要注意。どんなに忙しく大変でも、「育児期間はわずか」と考え、まず子どもを早く寝かすことに全力を注ぎ、その後に自分の時間を過ごすようにしたいものだ。
(田幸和歌子+ノオト)