英語は○歳から開始するのがベスト!

第1回 年齢別脳の育て方
まだよちよち歩きの赤ちゃんが、何にも教えてなくても急に積み木や水泳が出来ることがある。そこで「うちの子天才かも?」となり、欲が出て「もっとこの子の脳を伸ばしたい」と思いあれこれ習い事などさせてしまう親がいる。果たしてこれはいいことなんだろうか? 「しあわせ脳に育てよう!子どもを伸ばす4つのルール」の著者である脳科学コメンテイターの黒川伊保子氏に話を聞いた。

●習い事って、いつから始めればいい?

習い事スタートに関しては様々な意見があるが、脳科学的にはいつ始めるのがいいんだろうか?

「3歳のお誕生日までは、子どものペースと母親の気持ちの安定を最優先して欲しいので、いじらず、自然体に過ごして欲しいですね。自分の脳が欲したものにじっくり出会うことが重要。なので、決められた時間に何かするというお稽古事、習い事は極力避けたいところ。でも専業主婦などで、ママ友も少なく、社会から隔離されたように感じるなら、母親の気持ちの安定のために、遊び気分でお稽古事サークルに参加するのも悪くありません」(黒川氏 以下同)

では、いつ頃から習い事を始めるのがいいのだろうか?

「4歳から7歳までの間がお稽古事の開始適齢期になります。3歳のうちでも、上のお子さんにつられたりして本人が興味を示せば、始めてもOKです。プロのスポーツ選手や天才音楽家もこの時期にスタートしています。4歳から7歳までの間に始めると小脳の発達を助けますので、本人が面白がってやれそうだったら、ダンス、楽器演奏、スポーツなど何か始めてみるといいのではないでしょうか。小脳は、ことばのセンスや理系のセンスにも関わる器官。この時期、身体を動かすことが、脳のセンスアップにつながるのです。ただ無理やり何かを始める必要もなく、高低差のある空間での自由遊びや、楽器遊びでも小脳発達には同じような効果があります。あくまでも本人が楽しんでやれることが重要なポイントです」

実際、正統派のトッププロを目指すわけではなかったら何歳から始めても大丈夫だそう。開始年齢が遅かったからといって、本人がやりたがっていたら、水を差すことはもちろんない。

英語は○歳から始めるのがベスト

●そろばんが脳の発達を助ける?

「9歳から11歳までは、脳が成長するゴールデンエイジです。そろばんは、数字を視覚的なイメージで捉える訓練になります。9歳、10歳、11歳は、脳神経回路のネットワークが劇的に増える時期なので、右脳のイメージ領域と、左脳の計算領域を連携させるそろばんは、とてもいい刺激になります。この時期に手に入れる知識の枠組みはOSのようなもの。コンピューターの価値を決める中枢の機能になります」

●英語スタート早すぎNG

「英語は、せめて8歳を過ぎてからがベストだと考えています。他言語が母音を右脳で認識するのに対して、日本語は母音を左脳で認識する珍しい言語です。つまり日本語は脳の使い方が特殊なのですが、世界観が完成しないうちに他の言語と混在させてしまうと、混乱してしまう可能性があります。日本人が物理学や工学など理系の研究に強いのは、特別な脳の使い方をする日本語のおかげとも言われています。理系の研究者を目指すなら、英語教育は12歳からでいい。せめて言語脳完成期の8歳までは、できるだけ豊富な母国語を聞かせるべきです。私自身は、公立小学校での英語教育には反対ですね」

つまり11歳までは脳をひとつの言語モデルに統一しておいてほしいという。

ただこんなケースならば全然問題ないという。

「ちなみに、外国に住んでいたり、外国語のネイティブの家族がいるなどして、暮らしの中で自然に外国語に触れる分には心配することはありません。あるいは、幼稚園などで、ときどき外国語で遊ぶくらいなら、世界観が壊れることにはならないですね。ただ、家族の中に複数の母語が混在する場合にも、主たる言語を決めて、その言語の語彙が欠けることのないように気を付けてほしいですね」

他の習い事も、親が決めるのではなく、子どもが興味を持ったら、スタートするのがいちばん良いそうだ。キーワードは自然体。たとえ身に付かなかったとしても、子どものうちにやった体験はきっと将来役に立つのではないだろうか。
(取材・文/谷亜ヒロコ)

お話をうかがった人

黒川伊保子
黒川伊保子
脳科学コメンテイター
㈱感性リサーチ代表取締役、人工知能研究者/脳科学コメンテイター。奈良女子大学理学部物理学科卒。人工知能エンジニアを経て、感性の研究者に。テレビや雑誌にもたびたび登場。著書に「恋愛脳」「夫婦脳」(新潮文庫)、「日本語はなぜ美しいのか」(集英社新書)、「英雄の書」「女は覚悟を決めなさい」(ポプラ社)など。
㈱感性リサーチ代表取締役、人工知能研究者/脳科学コメンテイター。奈良女子大学理学部物理学科卒。人工知能エンジニアを経て、感性の研究者に。テレビや雑誌にもたびたび登場。著書に「恋愛脳」「夫婦脳」(新潮文庫)、「日本語はなぜ美しいのか」(集英社新書)、「英雄の書」「女は覚悟を決めなさい」(ポプラ社)など。