【医師解説】救急車を「呼ぶ・呼ばない」の判断はどうすればいい? 他の重傷者に迷惑?

【医師解説】救急車を「呼ぶ・呼ばない」の判断はどうすればいい? 他の重傷者に迷惑?

緊急時には救急車の利用が必要な場合もありますが、よほどの事態でない限り、すぐに救急車を呼ぶのはためらってしまうのではないでしょうか? 救急車の必要性を見極める方法はあるのでしょうか? 救急車の必要性の判断方法などについて、高輪みつるクリニックの髙橋充先生に解説してもらいました。

≫ 【イラスト解説】救急の対応が必要になる「心臓発作の前兆となる初期症状」

監修医師:
髙橋 充(高輪みつるクリニック)

2012年、獨協医科大学医学部卒業後、横浜市立大学附属市民総合医療センターや武蔵野赤十字病院救命救急科、中村記念病院脳神経外科で経験を積み、2022年8月、東京都港区高輪に「高輪みつるクリニック」を開院、院長となる。日本救急医学会救急科専門医、日本医師会認定産業医、日本集中治療医学会集中治療専門医、日本頭痛学会頭痛専門医。日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会、日本アレルギー学会所属。

そもそも「救急科」とは? 専門医が解説

編集部

「救急科」について教えてください。

髙橋先生

救急科とは主に急な発熱や痛み、怪我などのいわゆる「急性疾患」の対応と全身管理を専門とする診療科です。ほかにも心肺停止や中毒、多発外傷、熱傷などの重症な病態も含まれます。「救急外来」「救急医療」などの言葉もよく耳にすると思いますが、これらも同様に「急性疾患」を対象とした医療や専門のことを指します。

編集部

どんな症状が「急性疾患」なのでしょうか?

髙橋先生

基本的には突然発症、あるいは速い経過で症状が悪くなっていく症状であれば救急科で対応します。軽症から重症まで、内科や外科といった診療科にとらわれず、幅広く全身の症状に対応することができます。

編集部

例えばどんなものがありますか?

髙橋先生

いわゆる「心臓発作」などと呼ばれている急性の心筋梗塞や重度の狭心症などは、速やかに「救急」の対応が必要になります。このような場合は、心臓の「冠状動脈」という血管がどこかで細くなったり詰まったりすることで、締め付けられるような胸の痛みが生じています。

編集部

ほかにはどんなケースがありますか?

髙橋先生

あとは、「脳卒中」ですね。脳の血管が詰まったり破れたりすることによって脳が障害を受ける疾患は、発症してから医療機関に到着するまでの時間、治療を開始するまでの時間が、その後の生命予後や後遺症を大きく左右します。「突然意識がなくなる」「今まで経験したことのないような突然の強い頭痛」「どちらかの手足が動かなくなる」「言葉が出なくなる」などの症状が出た場合は、早急に救急科や救急外来にかかりましょう。

救急車はどんな時に呼んだら良い?

編集部

家族が運転する車やタクシーで行っても良いのでしょうか?

髙橋先生

救急車でないと救急外来にかかれないということは基本的にありません。かかりつけの医療機関があって、そこで救急外来も対応しているようであれば、自家用車やタクシーで行っても良いと思います。医療機関が比較的近ければ、救急車の到着を待つより早く到着できるでしょう。

編集部

そうなのですね。

髙橋先生

しかし、救急車を呼ぶメリットとして、119番に電話をした時点で、通信指令員が救急車の到着前に応急手当ての必要があるかを判断し、必要に応じて適切な手当の方法を指導してくれる場合もあります。救急車内である程度の応急処置や検査もできます。ご家族や付き添いの方がどうしていいかわからなかったり、動揺していたりする場合は、無理をせず救急車を呼びましょう。

編集部

それでも「救急車を呼ぶべきか」の判断は難しいですよね。

髙橋先生

そうですよね。そんなケースのために、消防庁では「救急安心センター事業」を行っています。救急車を呼んだ方がいいかの判断に迷った時、専門家からアドバイスを受けることができる電話相談窓口で、7119番に電話すると、医師、看護師、相談員から「救急車を呼んだ方がいいか」「ご家族や付き添いの方とともに急いで病院を受診した方がいいか」などのアドバイスをもらえます。

編集部

なるほど。ほかにも何か見極め方はありますか?

髙橋先生

「救急」という言葉に則って言えば、突発的になんらかの症状が出現した場合は救急車を呼ぶことを考えましょう。先に述べた「心臓発作」や「脳卒中」も突然起こることが特徴です。「○○の番組を見ていたときに胸が痛くなった」「○時○分に突然しゃべれなくなった」といった具合に、数分以内に急激に症状が最大級に到達する場合は、救急車を呼ぶべきと言えるでしょう。子どもや高齢者はとくにですが、普段と様子がおかしく反応が乏しい場合や食事や睡眠などができないくらいに苦しそうだったり、痛がったりしている場合も緊急性が高い可能性があります。

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