人災となった熱海の土石流
2021年におきた熱海での土石流災害では、災害関連死を含む28人が死者・行方不明者となり、半壊もしくは全壊の家屋は128棟となる甚大な被害となりました。
また、土石流のおきた逢初川沿いは警戒区域とされ立ち入り禁止となり、158世帯が避難を行いました。そして、この警戒区域は2023年の9月1日まで解除されず、土石流の発生から約2年2か月間も続くこととなりました。
この熱海での土石流は、逢初川の上流に“違法に捨てられた土”が大雨によって川に流れ出したことが原因となり、この土が無ければおきなかったものとされています。
元々、この土地を購入した事業者は、宅地をつくるため土砂を積み上げて平坦な土地をつくるための「盛土(もりど)」を15mまで行う計画書を熱海市に出していましたが、後に計画を変更し残土処理場とするものとしていました。この変更時にも盛土の高さは修正されていなかったものの、実際には50m近くまで土が積み上げられていました。また、盛土がくずれることを防ぐために岩石を積んだ堤防を設置する計画もされていましたが、この堤防も実際には設置がされていませんでした。
通常、盛土を行う場合には、良質の盛土材(土や砂、小石など)を使用する、排水設備を設ける、土を十分に締め固めることが必要となります。しかし、問題のあった盛土には木片、コンクリート片、金属片など様々なものが混入しており、盛土の表面に配水設備が無く、土もきちんと締め固められてはいませんでした。また、土石流がおこる以前に、盛土に小さな崩壊があったことが確認されています。
土地の所有者と施工者は市に提出したの計画通りに盛土を行い、安全性に基づき適切に施工を行うこと。また、行政は事業者による計画外の行為を確認した時点で、命令措置を出し法令を遵守させることができていれば、防げる可能性が高かった災害でした。
なお、この熱海での土石流をきっかけとし、危険な盛土を規制するため「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)が2023年5月26日に施行されることになりました。
土石流に限らず、大雨や台風によっておこる風水害や土砂災害は、天気予報でくることが予測できます。大雨となる日にはできる限り外出をひかえ、気象庁や市町村からの情報をチェックして早めの避難を心がけましょう。
参考資料
防災科学技術研究所 自然災害情報室
自然災害について学ぼう 16.土石流
第10回 土砂災害に関するシンポジウム論文集,2020年9月
融雪土砂災害に対する融雪を考慮した土砂災害警戒情報の適用性の検討
2021年度砂防学会研究発表会概要集
融雪型火山泥流の発生要因と移動特性について
国土交通省 中部地方整備局
御嶽山 火山防災だより vol.21
熱海市 【解除】災害対策基本法第63条に基づく警戒区域の設定
政府広報オンライン
土砂災害から身を守る3つのポイント あなたも危険な場所にお住まいかもしれません!
静岡県 逢初川土石流災害に係る行政対応検証委員会
検証委員会最終報告書(令和4年5月13日公表)
地下水学会誌 第65巻第1号
2021年に熱海市で発生した盛土の崩壊により土石流を生じた原因の考察
国土交通省 「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)について
配信: moshimo ストック
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