しかし、わが子の先生が子どもを悩ませる“モンスター教師”だったら…?
●ほかの児童へ“さらし者”にする罰が横行する現状
モンスター教師とはどのような存在か。例えば、最近の小学校では次のような教師が存在しているという。
・高学年の場合、「1年生の廊下に立っていなさい」と、下級生に見せつけるように恥をかかせる。
・廊下に立たせるだけではなく、その子の机と椅子も廊下に出し、一日中そのままにしておく。
・「お前はこのクラスから出ていけ」と、隣のクラスに追い出す。
・教師だけではなく、ほかの児童にも「どこがいけないのか?」をダメ出しさせる。
特徴的なのは、どれもほかの児童たちに“さらし者にする”こと。もちろんクラスで怒られるようなことをする児童にも非があるが、本人に諭す方法を取ればいいことも。なぜ、このような陰湿な教師が増えているのか?
●体罰と違って、グレーな指導法は問題にならない
「こういった教師は本当にたくさんいます。一昔前ですと、やんちゃで問題のある児童を教師は“愛の鉄拳”で黙らせる方法が主流でした。しかし、現代では体罰は大きな問題になります。それができない代わりに、教師の間ではこういった問題にならないぎりぎりの“グレー”な指導方法が次々と編み出されているのです」
こう語るのは、2014年に『オバタリアン教師から息子を守れ - クレーマーとは呼ばせない! 親の心得』(中公新書ラクレ)で、問題教師の現状について執筆した、教育ジャーナリストのおおたとしまささんだ。
「児童を陰湿につるし上げることでクラスを制圧する方法を覚えてしまうと、教師はなかなかやり方を変えることができなくなるのだと思います。それに代わる指導方法を身に着けてスキルアップできればいいのですが、教師の労働環境も過酷なので、そういった時間も取れないことが多いのです」(おおたさん、以下同)
●精神疾患で休職する教師とモンスター教師は表裏一体の存在
確かに、最近教師の過酷な労働環境に関する問題を耳にする機会は増えている。それに加えて児童の親による“モンスターペアレンツ”も先生の大きな負担になっているのは想像に難くない。
「近年は過酷な労働環境により、精神疾患で休職する教師が増えています。そういった教師と、児童に対して陰湿な教師の存在は、コインの裏表の関係といえるのです」
おおたさんの著書内では、小中学校の教員の残業時間の平均は、約95時間30分/月。10年間で約10時間残業が増えているというデータ(※)が掲載されている。こういった過酷な環境やモンスターペアレンツなどによるストレスによって精神疾患で休職する教師は、いわばストレスを心にため込むタイプだろう。
だが、人にはストレスを外に発散させるタイプも存在する。つまり、自分より弱い存在である“児童”に向かうのだ。これが“モンスター教師”が生まれる大きな原因になっているのは否定できない。
そう考えると、モンスター教師もいわば過酷な労働環境における被害者として同情すべき点はあるのかもしれない。しかし、子に当たる精神的影響も計り知れないし、親としても気になるところだ。こうした問題を察知したら、まずは子どもの友達やママ友などにも事実の確認をし、先生と話し合いをする手段を取ろう。
※全日本教職員組合による2013年発表の調査結果による
(高山惠+ノオト)