●スモールステップは、自転車の練習のイメージで!
「親御さんは、ついわが子にいきなり“理想”や“完璧”を求めてしまうんですね。だからイライラするんです。子どもの実状はそれぞれ違うのです。つまり、何かを習得させるときに大人側のイメージや理想を優先するのではなく、その子の実状、ペースに応じて進めることが何より大事なのです。いきなり“完璧”という高いハードルを与えるから親子共々つらいのです。そうではなく、できないならまずは親がやり方や環境の工夫を教えるなど、手を貸してやればいいのです。そうして少しずつできるようになったら手を離していく。これが“スモールステップ”です」(親野先生 以下同)
スモールステップのイメージをわかりやすく例えるなら、“自転車の練習”と同じだという。
「自転車の練習をするとき、まずは補助輪を2つ付けて、親が手で支えてやるところからはじめますね。それで乗れるようになったら親が手を離す。それで乗れたら補助輪を片方だけ外してみる。それで上手く乗れたら、両輪外して親の手の支えだけで乗る。それで無理だったら、また補助輪を片輪戻して…と3歩進んで2歩さがるといったように繰り返しながら、最後に親の手の支えもなしに乗れたら達成ですね。このように、相手の実状をよく見て、それに合わせた“過不足のないサポート”をするのです。もちろん、子どもができることまで親がやってしまってはいけません。それは過保護になってしまい、逆にお子さんの成長の足を引っ張ることになってしまうので。相手をよく見て、できない部分をサポートするのがポイントです」
つまり、“勉強”や“忘れ物”“片付け”ができないからといって叱り続けるのは、自転車の例で例えるなら、自転車に乗れない子どもに、乗り方や乗れる工夫も教えずに、“なんで乗れないの!!”と叱り続けているのと同じだという。
「叱ってできるようになるのであれば、とっくにお子さんはできるようになっていますよね? 叱っても子どもはできるようになりませんし、それどころが、叱り続けることは百害あって一利なしです。叱られ続けた子どもは、自己肯定感が低下し、“どうせできないし…”と、やる気、勇気も失います。さらに、叱ってばかりの親への信頼感もなくなってしまいますので、注意が必要です」
●合理的な工夫で子どもが“できる子”になる!
スモールステップの一番の利点は、その子のペースと段階に合わせることによって、叱らずに済むこと。そして、子どもは叱られないので前向きに取り組めることだという。では、その具体的なやり方とは? “宿題”や“勉強”になかなか取り組めない子を例にやり方を教えていただいた。
【子どもがなかなか宿題をしない場合】
「何事もそうですが、できない子を、できるようにするためには、“合理的な工夫”をしてやることが大事です。いきなり“自分からやれる子”を求めるのではなく、取り掛かりのハードルを下げてやるんです」
以下が、宿題をなかなかしない子どもへの合理的工夫の例。
・学校から帰ってきたらランドセルの中のモノを箱の中に全部出して、見えるところに置く
・宿題のプリントやドリル、筆箱といった必要な一式をテーブルに出す。さらに、宿題のページを開いてから遊ぶ(取り敢えず準備方式)
・宿題が計算なら一問、漢字なら一字だけ書いてから遊ぶ(取り敢えず一問方式)
「ランドセルの中身を出すと、イヤでも宿題が子どもの目に付くうえに手に取りやすくなるんです。さらに、宿題と筆箱をテーブルに置き、その日やるページを開いておく、さらに一問だけ解くことで、全体の見通しがきくんです。そうすると、遊んで帰ってきて宿題に取り掛かるハードルは一気に下がります。これは実に効果ありますので、ぜひやってみてください」
ほかにもこんな工夫があるそう。
●宿題タイムに音楽を流す
「宿題タイムを決めて、その時間に決まった音楽を流し、その音楽が終わるまでに取りかかる約束にします。その時、流す曲は子どもの好きな曲を選ばせると効果的です」
●宿題前に、簡単なウォーミングアップ問題で褒める
「宿題前に、その子が1分くらいで簡単にできる計算問題を、5問くらい作ってやらせ、そして採点します。簡単なので当然いい点になるので褒めてやります。その流れで“じゃあ、宿題やろうか”と促すと、自然と宿題に取り掛かりやすくなります。要するにウォーミングアップです」
このように、合理的工夫でまずは宿題しやすい環境整備をしてやることで、子どもはどんどんできるようになるという。
「勉強をなかなかしない子も、下校から寝るまでスケジュール表を作って勉強時間を“見える化”したり、家のアナログ時計の隣りに“勉強開始時刻”を示した画用紙の“模擬時計”を貼っておいて見える化するのもおすすめです。こういった工夫で、子どもを叱る回数も減りますし、子どももみるみる変わっていくでしょう。そして、スモールステップの効果をグンと上げるためには、できなかったことができたときは、必ず“褒める”ことを忘れずに!」
ぜひ、今日から親子でトライしてみてください!
(構成・文/横田裕美子)