わが子の「忘れ物」を直したいなら“スモールステップで!

第3回 スモールステップで子どもが変わる!
わが子の“忘れ物”の多さに悩む親御さんは多いと聞きます。改善したいけれど、“手を貸してしまうと、いつまでたっても自分で気をつけるようにならないし、忘れ物をして困ればきっとそのうち直るだろう”と、その状況を放ったままにしていませんか?

「忘れ物をする子に、“忘れ物をすれば困ってそのうち忘れ物がなくなるだろう…”という理論がまことしやかに言われていますが、絶対にそういうことはありません。子どもというのは、そもそも自己改造が苦手なのです。むしろ、そういうことはかえって大人になってからのほうが直しやすい。本当にやりたいことが見つかり、目的意識をもって生活するようになれば、その必要に応じて生活面も気を付けるようになり、忘れ物もしなくなるものです」

そう話すのは、教育評論家の親野智可等先生。しかし、だからといって子どもの忘れ物をそのまま放っておく悪影響は多いという。

「子どもの忘れ物を放っておくと、忘れ物をする回数が増えるようになります。そうすると、ますます先生に叱られますし、友達からの信頼も低下していき、いじめの原因になることもあるのです。また、忘れ物をすることで授業に集中できず学力も落ちてしまいます。だから、放っておくのではなく、まずは親が手を貸していきながら改善すればいいのです。だんだんできるようになっていったら、手を離していく。これがスモールステップです」(親野先生 以下同)

スモールステップとは、いきなり完璧を求めるのではなく、その子の成長段階までハードルを下げてやり、その子の実状に応じた過不足のないサポートをして導く方法だ。その大まかな流れは次のように進めるという。

1) 親が一緒にやってやり、やり方(合理的な工夫)を教える
2) 次に、親が声かけだけする
3) 次に、親が声かけもしないが、最終確認だけしてやる

では、忘れ物を直すための具体的なやり方=合理的な工夫とは?

●不要な物を処分する

「とにかく、不要な物が一緒に置いてあるのは忘れ物の原因となります。前年度の教科書やノート、要らないプリントなど、使わない物を処分するか、場所をかえて置くようにしましょう」

●持ち物コーナーを作る

「学校に持っていくものが家中のあちこちに散らばっているのも、忘れ物の原因になります。家の1~2カ所に持ち物コーナーを作ってそこに置けば、探すのが楽ですし、準備をしているときに“あっ、これ持っていくんだった”と気づくこともできます」

●見える化する

「いろいろな方法で“持ち物を見える化”する方法も忘れ物対策におすすめです。絶対に持っていくべき物の場合は、付箋に書いて履いていく靴に貼っておいたり、ホワイトボードに持ち物リストを書いてチェックしたり。毎日持っていく物のリストをランドセルやカバンの内側に貼っているお宅もあります。また、写真を活用するのもひとつの方法です。毎日持っていく物を写真に撮り、玄関のホワイトボードに貼ったり、習字セットや絵具セットなど細かい物が多い場合も、持ち物の集合写真を撮れば、それを見ながらチェックできますね」

●カバンの中身を全部出す

「あるご家庭では、子どもが学校から帰ったらすぐ、広くて浅い箱にカバンの中身を全部出すようにしているそうです。そうすると、親も学校からのお便り、予定帳も見やすくなり、忘れ物がかなり減ったそうです。また、宿題にも取り掛かりやすくなる利点もありますので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?

わが子の忘れ物を直したいならスモールステップ

何かを子どもに習得させるときには、いきなり大人の理想や完璧を求めてはいけないという。

「〇年生だからできて当たり前ということではなく、その子の状態に応じてサポートすることが大切です。段階に応じて導くことで、叱ることもなくなり、子どもも前向きになれるのです。“自分が困れば直るだろう。先生に叱られれば直るだろう。だから放っておく”という考えは自己肯定感を失わせ、子どもの成長の妨げにしかなりません」

また、次のような更なる弊害も…。

「それに、忘れ物が多くて苦しんでいる自分に何の手助けもしてくれない親に対して、子どもは“冷たいな”と感じてしまいます。つまり、親に対する愛情不足感が出てくるのです。愛情不足を感じている子は、危険なことや反社会的なことに走る可能性が高まります。そうすると親が困ったり心配したりします。それを見て、『こんなに困って心配してくれてる。愛されている証拠だ』と安心するのです」

だからこそ、“放っておくのではなく助けてあげてほしい”と、親野先生は話します。

「助けてあげてください。そして、性急にならないことも大切です。というのも、ひと言で忘れ物をなくすといっても簡単なことではないからです。自己管理力、整理整頓の能力、意志力、注意力、段取り力、想像力、空間認識力など、いろいろな能力が総合的に伸びないと忘れ物も減りません。ですから、合理的な工夫をしても一向に改善が見られないということもよくあります。というより、それが普通です。ですから、長い目で見てあげてください。特に男の子脳の度合いが高い子は“なが~~~い”目で。大人になれば直りますから大丈夫です」

子育ては、焦らず急がず、わが子を信じて長い目で導くことが何より大事ですね!
(構成・文/横田裕美子)

お話を伺った人

親野智可等(おやの・ちから)
親野智可等(おやの・ちから)
教育評論家
長年の教師経験をもとに著書やメルマガで勉強法や子育て法を提案。全国各地の小・中学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気。講演依頼とメルマガ登録は「親力」で検索してウェブサイトから。
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