心のケアと一体的に進める防災教育の意義

心のケアと一体的に進める防災教育の意義

「安心感」が大切

ここまでは心のケアの必要性を指摘している部分です。ではなぜ、そこに防災教育が必要になってくるのでしょうか?キーワードは「安心感」です。
3つの安心感という考え方があります。
1つ目は、心が不安になったり体が辛くなったりするのは「普通ではない状況での普通の反応だ」という安心感です。子どもたちは不安になった時に「自分は弱い人間だ」「どうして強くなれないんだろう」と自分を責めることがあります。あるいは、心理チェックのアンケート項目を見て、自分もそのような症状に襲われるかもしれないと不安になることがあります。そんな子どもたちに、そんな反応は誰にでも起こることだから心配しなくても良いという安心感を持ってもらいたいと思います。
2つ目は、あなたのそばには誰かがいてくれるという安心感です。余震や暗闇を怖がる子どもたちを親が抱きしめてくれたり、学校では友達や先生がそばにいてくれたりといった寄り添いが生み出す安心感です。
3つ目は、同じことは2度と起こらないという安心感です。大きな災害の後、同じ災害がまた起こることはないという安心感です。ここに防災教育が関わっています。「同じことは2度と起こらない」を「同じことは2度と起こさない」に変えていくのです。子どもたちが災害を引き起こす自然現象のメカニズムを学び、災害への正しい備えを学んで実行し、災害に遭遇したとしても、正しい身の守り方を学んでおけば助かる確率は上がります。安全を生み出す防災教育が安心感を与えるのです。「ハザードの理解」「備え」「対応」という3つの要素からなる「狭義の防災教育(防災教育のミニマムエッセンシャルズと言っても良い)」を学校教育に取り入れるのは安心感の醸成の視点から極めて真っ当なことです。

広義の防災教育

もうひとつ大切なのは、防災教育を災害から身を守る教育(survivorとなるための防災教育)とだけとらえるのではなく、さらに広げて、誰かを支援する教育(supporterとなるための防災教育)、社会に貢献する教育(市民力・人間力を育む防災教育)と、広くとらえることです。「広義の防災教育」です。
いくつか例を挙げましょう。

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