母としてのあり方に迷った時には 「コシノ洋装店ものがたり」
世界的なファッションザイナー、コシノ三姉妹の母であり、自身もデザイナーの先駆けであった小篠綾子さんの自伝。早逝した父や夫の代わりに一家の大黒柱となり、洋裁店の店主としてがむしゃらに働いた日々。母親らしいことは何もしなかったという綾子さんですが、信念を持って仕事に打ち込むその姿をみて「生きるなら母親のように」と三姉妹は同じ道を選びました。生きることを真剣に楽しむ母親こそが、子供にとって生きる見本になるということを、この本は教えてくれます。
子どもの才能を信じる母の覚悟 「序の舞」
有名な日本画「序の舞」の作者、上村松園の生涯をモデルにした小説。主人公・津也の波瀾万丈な生き様も圧巻ですが、彼女が世に出ることができたその陰には、周囲から何と言われようと娘の才能を信じ、献身的に支え続けた母・勢以の理解と覚悟がありました。日本画史を代表する女性画家を生んだ母と娘の固い絆が胸を打つ、読み応えのある長編。
奔放なわが子に手を焼いているママに 「窓ぎわのトットちゃん」
小学校を退学になった問題児(!?)、トットちゃんが通うことになった少し変わった学校「トモエ学園」の日々を、活き活きと描いたノンフィクション。自由で個性を尊重する教育を追求する校長先生は、折に触れ、トットちゃんに「君は、本当は、いい子なんだよ」と言い続けました。それに対して「そうです!私はいい子です!」と素直に受け止めるトットちゃん、そんなわが子をおもしろがりながら温かく見守るトットちゃんのお母さんの姿から、子どもとの向き合い方において大切なことに気づかされます。
心に響く父の愛情 「置かれた場所で咲きなさい」
「子供は親や教師の『いうとおり』にはならないが『するとおり』になる」、「あいさつは『あなたが大事』と伝える手段」……。30代で大学の学長となり、うつ病を患い、克服した経験を持つ修道女の著者が、実体験を元に、心に響く言葉を綴ります。幼少時に父を目の前で青年将校に射殺された悲劇(二.二六事件)にも触れ、「9年間に一生分の愛を注いでくれた」と、父の深い愛情を伝えるエピソードも紹介。その愛の姿は、子育て奮闘中のママたちの心にもきっと響くはず。
(文・佐藤 舞)