プル型支援とは
被災した地域の避難所で必要とされると思われるものを支援するプッシュ型支援は、長期にわたって行われる支援ではありません。避難所で必要とされるものは、刻々と変化していき、プッシュ型支援で送られたものの中には余ってしまうものや、逆にそれまで送られていた支援では足りなかったものや、他に必要なものなどが出てくるのです。
そのため、避難所や市町村などで被災した人たちの要望をとりまとめ、ニーズに基づいて国や提携企業などに支援物資を要請する、プル型支援に切り替えられます。
必要なもののほか、引き渡し場所なども要請することで、避難生活を送っている人たちが本当に必要なものを過不足なく、必要とされる場所に届けることができます。
しかし、これも避難所での要望が基本です。在宅避難している人の要望を、自治体の職員などが1軒1軒まわって聞き取り調査をするのは災害時には難しいことです。避難所でも、受け身となって自治体の職員の方などにニーズの取りまとめを任せるのではなく、避難している人たち自らで要望を出し合い、取りまとめることで、早い段階でプル型支援に切り替えることができるかもしれません。
支援物資に頼らない備えを。被災地支援はモノよりお金を。
大規模な災害が発生したときに、避難所で過ごす人たちに支援物資を供給されるしくみは、国や都道府県、市町村の間で、しっかりとつくられています。一時的に物資が不足しているように感じても、条件が整えば届きます。しかし、できるだけそうした支援物資に頼らずに「自分の身は自分で守る」「自分が必要なものは、自分で備えておく」ことは大切です。防災・減災の基本は、やはり自助なのです。
避難所以外での避難生活を考えているなら、なおさらです。
また、被災していない地域にいて、SNSなどで「モノがなくて困っている」との被災地の人たちの声を見聞きしたり、被災した人たちを元気付けたい、役に立ちたいと思っても、感情で動いてはいけません。
被災地で声を上げている人のところには、まだ届いていないというだけで、実際に支援物資は被災地に向かっているか、被災地のどこかにすでにあるのです。
感情で送られたものが、被災した地域に第二の災害を生む可能性があることを考え、立ち止まるようにしましょう。
食料や衣類などを送ってはいけないことはもちろん、千羽鶴や寄せ書きなども被災地の支援にはなりません。
最も効果的な被災地支援は、「お金」です。
被災した人たちが、元の生活を取り戻し、復旧・復興するためには、お金が必要なのです。また、お金なら、被災地の状況に合わせて、モノに変えることもできます。被災地の人や現地で復旧作業を支援するボランティアの人たちが、地元の商店などで必要なモノを買えば、それも復旧への足掛かりの一つとなります。
被災地をお金で支援する方法の一つに、自治体などが募る「義援金」があります。義援金は配分の協議などに時間はかかりますが、被災した人たちに直接、現金でわたるものです。
また、すぐに支援につなげたい場合には、被災地を支援する団体の活動をサポートするのに使われる「支援金」があります。
どちらも、ふるさと納税のポータルサイト「さとふる」や「ふるさとチョイス」などから寄付することができます。大きな災害が発生し、どこかの地域で被害が出たときには、こうしたふるさと納税のポータルサイトで、災害支援の特設ページが設けられます。
サイトで、支援したい自治体などを選び、希望する金額を寄付することができます。
寄付証明書の発行などの事務手続きを、他の地域が代理で行う「代理寄付」が実施される地域もあります。
被災した地域の人たちを支援したいと思ったら、ふるさと納税を利用して、金銭的支援を行うことをぜひ考えてみてください。
参考資料>
内閣府中央防災会議幹事会 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画
東北大学高等大学院機構 災害時の救援物資にかかる課題の調査・議論と対策の検討
DIAMOND online 熊本地震で、善意が「第二の災害」を引き起こさないために
配信: moshimo ストック
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