渡船に乗ろう【浦賀編(1)】/内田晃「ゆるゆる『歩き旅』のススメ!」

 今回の“渡船に乗ろう”は神奈川県横須賀市の浦賀港で運航する「浦賀の渡し」にした。

 浦賀港は三浦半島の東部、南北に深い良港だが、東西の移動は迂回が必要でひと苦労する。そこで、港内を横切る渡船が誕生した。江戸期の1725年頃に始まったというから約300年の歴史がある。

 京急本線浦賀駅から浦賀通りを進み、西渡船場を目指す。左側の大きな工場跡は造船所の跡で、明治期から平成期までに帆船日本丸や青函連絡船、護衛艦などが建造された。国内唯一となる明治期のレンガ造りのドライドックがあり、イベントなどで公開される。

 浦賀行政センター前交差点まで来たら、右に曲がり老舗のパン屋に寄り道する。横須賀のご当地パン“ポテチパン”を味わいたかったのだ。文字どおり、ポテトチップスと千切りキャベツをマヨネーズ和えにして、パンに挟んである。

 さっそく、丸かじりするとポテトチップスのカリッとした食感はなく、キャベツサラダパンといった感じ。期待外れと思いきや、かむほどに青海苔の風味が広がり、ポテトチップスの味が主張を始めた。これはこれであり、だ。

 同時購入したのは、一番人気のフィッシュサンド。柔らかく甘みのあるソフトフランスパンに、手作りタルタルソースを乗せた白身魚フライが挟んであり、文句なしのおいしさだった。

 次に浦賀コミュニティセンター分館内の郷土資料館を訪ねる。江戸期の浦賀奉行所に関する模型や資料が展示されている。浦賀奉行所は江戸に出入りする船舶を取り締まった海の関所で、外国船に対する防衛や応接も担当した。1853年に黒船が来航した際、最初にペリー提督と交渉したのは浦賀奉行所の与力だ。ひと足延ばした奉行所跡地には堀の石垣や石橋が残り、その広さが実感できる。

 西渡船場の手前で大きな鳥居を見つけた。叶(かのう)神社といい、奥の高台に社殿が見える。参拝すると社殿には見事な彫刻が施されていた。説明板によると、平安期に文覚上人が源氏再興の願をかけて、石清水八幡宮の神を勧請したのが始まり。その後、大願が叶い叶大明神を名乗ったという。

 東岸にも叶神社があり、西で勾玉を授かり、東のお守り袋に収めると、縁結びや人との出会いのお守りが完成するそうだ。

 ようやく西渡船場に到着。ちょうど船が出たばかりだった。次の出航時間は? 周囲を見渡すが、時刻表がない。さて、どうしよう。

(次回へ続く)

内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。

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