●歯医者の出身大学で通院を決めたAさん
「若い頃、先生に勧められるがまま、安易に前歯を差し歯にしてしまった経緯もあって、元々歯医者さんが信じられないんですね。今思うと、前歯の差し歯ですら“本当に差し歯にする必要があったのかな?”と。気が小さい方なので、疑問に思っても、なかなか切り出せないんです。でも、たいていの女性は、そんなものなのではないでしょうか」(Aさん 以下同)
Aさんは高校1年生の長男と、小学4年生の次男を持つ44歳のママ。愛らしい笑顔が魅力で、前歯も差し歯だとはわからないほどキレイに揃っているが、彼女なりのコンプレックスを抱えていた。
「前歯を差し歯にしてから20年ほど経ちます。2回入れ直したので、今の歯は3代目になりますが、年月と共に差し歯の境目の匂いが気になりだして…。フロスやマウスウォッシュもしているし、家族や周りの人に相談しても“まったく気にならないよ”と言われるので、自分のなかだけの問題だとは思うのですが、そんなコンプレックスもあって、歯医者には頻繁に通っています」
自分でも「ちょっと病気かも?」と語るAさんは、3カ月に1度、歯科医院でスケーリング(歯石除去)してもらうという。
「歯医者選びには特に慎重になりますね。あまり商売っ気のない近所の歯医者さんにとても満足していたのですが、3代目の差し歯を入れ替えるにあたって、周囲のママ友に“差し歯を入れるなら、有名歯科大卒の先生の方が、腕がいいから安心じゃない?”とアドバイスされたんです。単純なので“やっぱりそうかな、安いものじゃないし…”と思った私は、近所で有名歯科大出身の先生を探しました。評判のいい先生でしたが、入れてすぐ、差し歯の境目に黒い部分が見えるようになって…。1本10万円もするので、かなりショックでした」
●保険治療を勧められず…
そんな経緯もあり、またもや歯医者が信じられなくなったAさんは、次のスケーリングから、また違う歯科・Bに転院。Bはできたばかりの歯科で、ネット上の評判も良かったことから、すぐに予約を入れたという。
「元々通っていた歯科に戻ればよかったんですけど、差し歯をほかで入れたという負い目もありましたし、どうせなら長く診てもらえて、新しい機器が揃っているところがいいなと思ってしまったんです。設備の良さに目が行ったのが運の尽きでした。ただスケーリングに行っただけでしたが、前の歯医者さんでも虫歯はないと言われていたのに、“あー小さな虫歯がありますね”と。どこが虫歯なのかたいした説明もなく、“ここは見えるところなので5万円になります”と言われたので、その時は“それしか手段がないのかな…”と鵜呑みにしてしまい、まんまと削られ、5万円のセラミックを入れられてしまいました」
自宅に帰って夫に相談すると、「保険治療の説明がないなんておかしい!」となじられたそう。
「たしかにそうなんです。見えそうで見えないような場所なので、今思うと“保険の銀歯でも良かったのかな?”と。治療が終わると“次はここが虫歯かもしれないから…”と言い出したので、主人と相談して、通うのを止めてしまいました。再び歯医者難民になりましたが、やはり最初に通っていた、あまり商売根性がない地元の歯医者さんに戻ろうかと思っています」
この経緯について、斎藤院長からアドバイスをもらった。
「まず、ネット上の評判などはまったくあてにならないと思って下さい。誇大広告な歯科はたくさんあります。それから、治療についての説明がないというのはダメでしょうね。出身大学も、腕とはあまり関係ありません。これだけ歯科がある今の世のなか、先生方は皆さん、患者さんの争奪戦なんですよ。経営するのも一苦労なので、再診料目当てで、治療を何回にもわける方もいますし、“利益になるならやっちゃおう!”という目的で、歯を抜いたり削ったりする先生もいます。5段階中1か2の歯医者さんが実に多く存在し、5の先生はあまりいないと言っていいかもしれません。それだけいい歯医者さんに当たることは難しいと言えます」(斎藤氏)
「おや?」と不信に思ったら、遠慮なくセカンドオピニオンを受けるべきだと語る斎藤院長。それを嫌がるような歯医者なら、すぐに通うのを止めた方がいいという。今通っている歯医者さんに少しでも不信感があるママは、歯を抜かれないうちに…今すぐセカンドオピニオンを受けた方が良さそうだ。
(取材・文/吉富慶子)