●敬語は、付け焼刃で正しく使えるようになるほど簡単ではない!
「敬語には、“尊敬語”“謙譲語”“丁寧語”の3種類があります。これらを自分と話す相手との人間関係(立場の違い、年齢など)により微妙に使い分けなくてはならないので日本語は難しいのです」(立石さん 以下同)
3種類の敬語の使い分けは以下とされている。
(1) 尊敬語…相手または相手に関係のある人や持ち物・状態・動作を敬って使う言語
(2) 謙譲語…自分または自分に関係のある人や持ち物・状態・動作をへりくだって使う言葉
(3) 丁寧語…“です・ます調”言葉自体を丁寧に言う
このように、あらためてそれぞれの敬語の理屈を確認してみると、かえって使い方に戸惑ってしまうのでは? では、以下の敬語のどこがおかしいかわかるだろうか?
「この資料を拝見してください」
「受付で伺ってください」
「先生が申されたように」
「私はご存知ないんです」
これらは、すべて誤り。正しくは以下のとおりだ。
「この資料をご覧ください」
「受付でおっしゃってください」
「先生がおっしゃったように」
「私は存じ上げません」
「すべて正しく直せましたか? “拝見する、伺う、申す、”は、自分の行為をへりくだって相手を持ち上げる“謙譲語”です。ですから、相手の動作に使ってはいけないのです。また“存じる”“存じ上げる”は謙譲語ですが“ご”を付けると尊敬語になり自分に使うのは誤りです。
では、なぜこのような誤った言葉遣いをしてしまうのでしょうか? それは、敬語も含めて母国語そのものであって、幼い頃から耳にしていなかったためなのです。大人になって就職してビジネスマナーの特訓を受けて覚える人もいるでしょう。しかし、必要に迫られて覚えたものは、どうしても付け焼刃になってしまいます。敬語(特に尊敬語、謙譲語)は、頭で考えて瞬時に判断できるほど簡単ではありません。自分では懸命に言葉選びをして正しく使ったつもりでも、思わぬところで間違ってしまったりするのです」
●子どもに正しい敬語を習得させたいなら、親が日々正しい敬語を聞かせることが大事!
つまり、幼い頃から親が正しい敬語を使っているのを耳にしている子どもは、母国語として自然にマスターしていくことができるのだ。では、子どもに正しい敬語を身に付けさせるために、日々心がけるべきこととは?
「例えば、子どもが『先生が来た~』と言ったからといって、一緒になって『先生来たね』なんて言ってはいけません。『先生がいらっしゃったね』と、正しい敬語を聞かせましょう。このときのポイントとしては、子どもの言葉をいちいち咎めて敬語に直す必要はありません。親が正しい敬語を聞かせればいいのです。言葉を話すたびに叱ってしまうと、話すことを恐れるようになったり、ストレスから吃音になってしまうこともあるので気を付けてください」
では、そのほかの敬語の例も紹介!
子ども「先生が言ってたよ」
→親「先生がおっしゃっていたのね」
(目上の人からいただきものがあった場合)
→親「これ誰が下さったの?」または「誰にいただいたの?」
子ども「この記念品は園長先生からもらったよ」
→親「この記念品は園長先生が下さったのね」
「子どもには、3種類の敬語の使い方を理屈で教える必要はありません。理屈で理解するのは大人でも難しいもの。親が使っていれば自然と身に付きますので、今日から意識して気を付けてみてくださいね!」
お子さんのためだけでなく、正しい敬語も話せない恥ずかしい大人にならないように、親御さん自身もぜひ勉強しましょう!
(構成・文/横田裕美子)