●逃げずに向き合う
「何を考えているのか、もはやさっぱりわからない…」ママがそう嘆くのと同じくらい、思春期を迎えた子どもたちは不安を抱えている。大人へと変貌していく容姿、将来への不安、ホルモンバランスの崩れから生じるだるさ…。思春期の子どもたちは、実は、親と同じくらいつらく複雑な毎日を過ごしているのかもしれない。月野氏が、キレッキレのわかりやすい反抗期を迎えた長男くんとのエピソードを語ってくれた。
「ちょっと前の話になりますが、高3になる長男が、高校卒業後の進路のことで何を考えているのかがさっぱりわからず、私も主人も右往左往していた時期がありました。高校卒業後の進路について触れると不機嫌になり、“うるさい! しつこい!”と言ってくるので話がうまくできませんでした。そんな調子だったので、私も長男も進路のことについてあえて触れない状態が続き、気づけばタイムリミットが近づいていて…。ある時、主人が帰宅が遅い長男を注意した際に、張り詰めていた糸が切れたように大声をあげて泣き、こう言ったんです。“高校を卒業したら、どうすればいいのかわからない。進路を選択できない”と…。長男が、ついに本当の気持ちを吐き出した瞬間でした」(月野氏 以下同)
この時やっと、長男くんが進路のことに触れるとなぜ不機嫌になって怒るのか、その気持ちが理解できたという。
「“長男なりに、今までずっと1人で考え込んで悩んでいたんだ。見えない将来に不安を抱えていたんだ”と気づかされました。“なんで、もっと早い段階でしっかりと向き合って話を聞いてあげなかったんだろう”と後悔しましたね。子どもがイライラしていて様子がおかしい、子どもが考えていることがさっぱりわからない…もしも親がそう思ったら、やはりそこは逃げずに真摯に向き合って、子ども自身に聞くべきだったと反省しています」
とは言え、複雑な気持ちを抱えたわが子と、衝突することなく話し合うのは極めて困難な技でもある。それでは、思春期の子どもと正面衝突した場合、母はどう対処するのがベストなのか。
「難しいことではありますが、“反抗的な態度だから、何を話しても無駄”と思わず、“そういう言い方をされるとお母さんは悲しい”、”イライラした顔を見ているのはお母さんだってつらい“など、自分が取った反抗的な行動によって、相手がどんな思いをするのかを伝えることも時には必要かなと思います」
「押してもダメなら引いてみな」の要領で接していると語る月野氏。
「本当は、反抗的な態度を取られて大声で怒鳴りたい気分ですが、それをするとバトルになるのは目に見えているので、私は、“押してもダメなら引いてみな”の要領で冷静に話すようにしています。でも、毎回冷静さを保つことばかり意識していると、それはそれで疲れるので、スルーする時もあります。どうしても大声で言いたい時は、冷静に、そして汚い言葉は使わないように捨てゼリフを吐いてサッとその場を離れ、言い合いにならないように逃げます。うちの息子たちの場合は、時間が経てば怒られたことも忘れて普通に話しかけてくるので、お母さんのストレスを溜めすぎないためにはこれもありかと…(笑)。うちの息子たちは、スポーツの習い事で怒られ慣れもしているのですが、お子さんの性格やタイプによっては注意が必要かもしれませんね。主人には、“ここぞ!”という時に叱ってもらい、話をしてもらうようにしています。やはり、普段口うるさく言わない人が注意すると、心に響くようです」
●「いつかは自立するんだ」と言い聞かせて楽しみを探す
「反抗は自立への第一歩」と言われるが、子どもが離れていく寂しさを、ママはどう乗り越えていけばいいのだろうか。
「私は、今まさに、その寂しさをヒシヒシと感じています。夜になってもバイトや部活でいない子どもたち。主人は会社なので、私1人でシーンとしたリビングに立っていたりすると、寂しさマックスになります。“いつかはいなくなる、家を出ていくんだ、覚悟しておかないと”と自分に言い聞かせるものの、小さかった頃の賑やかだった時を思い出して、思わず涙がにじんでしまうこともあります。私自身も、どう受け止めたらいいのかまだまだ模索中ですが、単純に趣味や遊びに走って楽しんでしまうかも(笑)。今までできなかった分、友だちと旅行したり…。子どもたちが完全に手を離れたら、学生の頃からの友だちやママ友と、”旅行に行こう!”と盛り上がっています。友だちはありがたい存在です」
月野氏が描くコミックエッセイは、ママなら誰でも共感できるリアルな思春期エピソードが満載。思い切り笑えて、時に涙がこみあげる…子育ての醍醐味が、等身大な日常とともに綴られている。もしも反抗期に突入したら…カッとなる前に、ぜひ一度、月野氏の書籍やブログをチェックしてみよう。
(取材・文/蓮池由美子)