妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【コンパッション編】

妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【コンパッション編】

第8回 注目の「妻のお悩み」をまとめてチェック!
出産を機に、良好だった夫婦仲が急に悪化してしまう「産後クライシス」に陥っていませんか? 今回は対策として、親役割達成感や生活満足度など心の健康度に関わる「コンパッション」を心理カウンセラー、キャリアコンサルタントの筆者が解説します。

母親役割の達成感や生活満足度はどのくらい?

母親としての自分自身にOKを出せないときや、母親としてうまくいっている自信がないときはありませんか?

このようなときは、他人の評価を気にしすぎて焦ったり、自分を責めて頑張りすぎたりするものです。「~すべき」という思考にとらわれ、本当に自分のやりたいことや自分らしさがわからなくなることもあります。また、人生山あり谷ありで、仕事や友達付き合いなどがうまくいかないこともあるでしょう。

生活満足度が下がっているときや母親役割に達成感がないとき、心が辛いときは、ご自身の中にいる「小さな批評家」の力が強大になっていることがあります。

理想と現実のギャップを責める「小さな批評家」が、ご自身のストレスをさらに大きくしてしまう悪循環が起きていませんか? 自分の心のつぶやきをチェックして、「小さな批評家」がいつもよりでしゃばりすぎていないか気をつけましょう。

たとえば、こんな心のつぶやきがあります。

「部屋が片付いていない」
「子どもに持たせ忘れた」
「ご飯が作れなかった」
「早く寝かせなきゃ」
「子供の勉強ができないのは私のせい?」
「また怒ってしまった」

これらはどんな信念や「~すべき」思考からきているのでしょう?

理想とする母親像と比較することで、「これじゃだめだ!」の気持ちをどんどん大きくしている可能性があります。一つ一つは小さなつぶやきですが、長くたくさん続くと心は疲れてしまいます。

そして、心があまりにも疲れると自己を防衛する気持ちが働き、「自分をとりまく周囲が悪い!」と被害者的な気持ちになることもあるでしょう。こうなってしまうと、「全然~できない」「全く~ない」「~しかない」「いつも~」と、つい極端にネガティブな言葉で自分や相手を批判したり、怒り易くなったりすることもありますよね。

「私の気持ちなんて全くわかっていない」
「私が働かなくてはいけないのは夫の稼ぎが全然ないから」
「いわないと動いてくれない夫は家事のことを何も考えていない」
「生活全体をみているのは私しかいない」
「指示した通りの方法でいつも家事をやってくれない」

身近な存在である夫を責めたり、第三者を批判したりする「外向きな気持ち」が動いたときは、深呼吸して、言い方を考えてみましょう。

夫に状況や気持ちをわかってもらうことも、家事育児を分担する要望を出すことも当然のことです。快く理解してもらい、妻の負担を軽くするための行動を起こしてもらうには、アイデアを出し合う土台を作る必要があります。口にする言葉に、その土台を作るどころか壊してしまうような極端なネガティブワードが含まれていないか、一方的な評価や批判が入った言葉になっていないか、吟味してみましょう。

一方で、相手の状況を考えると伝えづらいことがあるかもしれませんね。夫婦だからこそ相談したいこと、聞いてもらいたいことがある現状を伝えましょう。そして「私の状況」「私の気持ち」「私に起きている弊害」を素直に話してみましょう。

このとき、妻の考える解決策を先に提示するよりも、先に夫から解決策の提案をしてもらう順番がよいかもしれません。自身の考えている解決策や提案と違う場合は、どういう方法がよいかメリットとデメリットを話し合い、お互いが納得できる方法が決まるとよいですね。このような対等な話し合いが、ふたりの絆を強めます。

妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【コンパッション編】

「セルフ・コンパッション」をご存知ですか?

「セルフ・コンパッション」という言葉はご存知なくても、自尊心や自己肯定感という言葉はよく耳にされると思います。

自尊心とは、自分を大事にする心のことで、私たちが生きていく上で心理的に不可欠な力です。自己肯定感とは、自分に対する「これでよし」「これで大丈夫」という感覚のことで、自分自身にOKを出す力でもあります。

「セルフ・コンパッション」とは、もし親友がおなじように大変で辛い思いをしているときに「自分ならどんな声掛けをするか?」と思い浮かぶ内容を、自分自身に対して声掛けすることです。このように自分を思いやってねぎらう習慣は、自分の中の「小さな批判者」の声を抑え、ストレスの悪循環を断ち切り、明日への力を作ります。

妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【コンパッション編】

夫婦の肯定感と「コンパッション」を上げる毎日の「コンプリメント」を増やす

では「私たち」カップルや夫婦、家族の肯定感とコンパッションはどうでしょう?

「私たち」カップルは、子供が生まれるとしなければならないことが増え、経済的にも苦しくなる可能性があることもわかっていたはずです。しかしながら、「それ以上に新たな喜びや幸せがあるに違いない」「ふたりで絆を深めて思いやりを持ち合い、アイデアを出し合えば工夫してやっていけるに違いない!」…といった風に感じていたのではないでしょうか。

個人の自己肯定感やセルフ・コンパッションと同じように、カップルの「私たちは大丈夫」「今はこれでよし」「何があってもふたりで解決すればいい」といった感覚の共有やねぎらいの声掛けは、ふたりの在り方にも大きく影響します。

カップルのコンパッションを高める日常的な行為の一つに「コンプリメント」があります。これは「小さな誉め言葉」、当たり前にできていることをねぎらう言葉のことです。声掛けはもちろん日常の挨拶も、「あなたが今日も変わらずそこにいてくれている」というコンプリメントになります。たくさん発見してたくさん発信していきましょう。

そうはいっても、「不満だらけでそう簡単にはいかないよ」というお気持ちもあるのではないでしょうか? 次回は、男女の違いについて注目します。

妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【コンパッション編】

■この記事は編集部&ライターの経験や知識に基づいた情報です。個人によりその効果は異なります。ご自身の責任においてご利用・ご判断ください。

この記事を執筆・監修した人

石橋 麻衣子(筆名:やまもとこも)
<公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント> 10代の子の母。一般企業で20年勤務後キャリアチェンジし、現在は公的機関での教育相談、スクールカウンセラー、精神科クリニックで心理検査やカウンセリングに従事しています。自身の心身の状態が子どもや家族の成長にとても大事だと強く実感しています。自分も他人も大事にするコミュニケーションでよりよい関係や笑顔が生まれますように。
<公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント> 10代の子の母。一般企業で20年勤務後キャリアチェンジし、現在は公的機関での教育相談、スクールカウンセラー、精神科クリニックで心理検査やカウンセリングに従事しています。自身の心身の状態が子どもや家族の成長にとても大事だと強く実感しています。自分も他人も大事にするコミュニケーションでよりよい関係や笑顔が生まれますように。