定年退職後、毎日何をしていいかが分かりません。長い老後のために貯金は使いたくない…こんな「退屈な日々」を解消するおすすめの過ごし方とは?

定年退職して半年がたったAさんは、毎日何をしていいかが分からず、家にこもりがちになってきました。
 
自分と妻の今後の医療費や介護費、孫たちへの援助などのために、貯金はできるだけ使いたくない…でも、年金だけでは暮らすだけで精いっぱい。このままでは体を動かす機会がなく、体に影響が出そう。
 
さまざまな思いが駆け巡り、不安になるそうです。老後の過ごし方、FPがアドバイスします。

まずは基本の考え方で資産を確認

定年退職してしばらくは仕事からの解放感もあり、時間に絞られることなく自由に過ごす時間を満喫する毎日です。

 

ですが半年経過したAさんのように、将来に不安を感じて日々の生活を悩む場合も多いようです。この不安を軽減するためには、資産の可視化がお勧めです。基本的な考え方としては下図のようになります。

 

(図表)

 

Aさんの場合は、(1)生活費が(4)(5)の収入で賄えているので、一番の心配ごとは(3)医療・介護費、特に介護に掛かる費用だと思います。そこでいくつかのデータを見てみます。

 

公益社団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、

■介護の期間は平均61.1ヶ月

■介護を行った場所 在宅56.8% 施設41.7%

要介護3までは在宅>施設ですが、要介護4以上で在宅<施設となります。

■介護費用 *一時的な費用の合計 74万円

* 月々の介護費用 平均8.3万円

介護を行った場所別にみると 在宅4.8万円 施設12.2万円

単純に計算すると約580万円です。あくまで平均値ですが、参考になると思います。

 

次に、(2)イベント費を考えます。○○記念日の食事会や温泉旅行などの他、自宅のメンテナンス、Aさんが確保しておきたい孫たちへの援助などを書き出してみて、それぞれの予算を見積もります。

 

この時点で“すべての実現は無理そう”なら、取捨選択したり個別の予算を削ったりの工夫をします。「足りないので少し働こうかな、それとも晩酌の回数を減らそうかな」ということになるかもしれません。

 

この見積もりには性格が大きく反映されます。お察しのとおり、慎重に(厳しく)見積もるとお楽しみの余力が少なくなります。「子や孫に多くを残したい」という気持ちも理解できますが、夫婦の生活を充実させることに重点をおいてほしいところです。

 

健康第一でぶらっと楽しむ

“お金を使いたくない”との思いから、自宅に引きこもりがちになっている不安について考えます。ご心配のとおり運動不足は体力の低下だけでなく、生活習慣病を引き起こし認知症の発症にもつながりかねません。

 

「内閣府 令和4年 高齢者の健康に関する調査結果(全体版)健康について日頃心がけていること」によると、「健康診査などを定期的に受ける」(67.7%) 、「休養や睡眠を十分にとる」(67.3%)、「栄養のバランスのとれた食事をとる」 (65.8%)、「散歩やスポーツをする」(50.9%) となっています。これは全国の65歳以上(令和4年10月1日時点)の男女を対象に行った調査ですが、健康に気を遣っていることがわかります。

 

同調査で日頃から体の動かし方をたずねた質問では、「ジョギング、水泳等の運動をする」よりも、「買い物に出掛ける」「散歩する」「ウォーキングする」などの回答が上位に並びました。気軽に体を動かすことを、日々心掛けていることが伺えます。

 

実際に70歳代の数人にたずねても、散歩を実践している人は多いです。雑誌で見つけた○○ランチを食べに行って、周辺を散歩してきた。家から3駅分散歩して、カフェで休憩して電車で帰ってきた。「散歩だけど、夫婦で少し出掛けることでリフレッシュできて楽しい。お勧めよ」と筆者の知人の1人は話します。

 

この程度なら、それほどお金もかかりませんし、準備も不要です。気ままにぶらっと出掛けるなんて、定年後の醍醐味ではないでしょうか。

 

出典

公益社団法人 生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査 P.170~174

内閣府 令和4年 高齢者の健康に関する調査結果(全体版)

内閣府 令和4年 高齢者の健康に関する調査結果 調査結果の概要 医療・福祉

 

執筆者:宮﨑真紀子

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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