萎縮性胃炎の治療
萎縮性胃炎の根本的な治療法はありません。
ヘリコバクターピロリ感染などの除去できる原因の場合は、除去することで進行を防ぐことができます。
ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌
抗生物質(クラリスロマイシン、アモキシシリンなど)とプロトンポンプ阻害薬(オメプラゾールなど)を組み合わせて使用することでピロリ菌を除去します。
除菌療法により、胃粘膜の炎症を軽減し、萎縮の進行を遅らせることができます。
これらの薬を1日2回、朝食後と夕食後に 1週間服用することで、約7~9割の方は除菌に成功しますが、残りの1~3割の方は失敗します。
1回目の除菌が失敗した場合は、2種類の抗生物質のうち1剤を別の薬に変えて除菌を行います。
1回目と同じように、3種類の薬を朝食後と夕食後に1週間服用することで、約9割の方は除菌に成功します。
2回目の除菌でも上手くいかなかった方には3回目の除菌が可能ですが、3回目以降の除菌については保険適用外、つまり自費診療となります。
また、プロトンポンプ阻害薬ではなく、さらに強力な酸分泌抑制薬のカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(ボノプラザン)を使用した場合は除菌率はさらに向上し、90%になります。
日本でのピロリ菌の1次除菌として広く使用されるようになっています。
自己免疫性胃炎の治療
自己免疫性胃炎自体には治療方法がありません。
胃粘膜の萎縮のためビタミンB12の吸収が低下するため、貧血を呈します。
そのためビタミンB12の補充が必要です。
ビタミンB12の欠乏により、貧血や神経障害が生じるため、定期的な補充が必要となります。
薬物療法
胃酸分泌抑制薬(H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬)や胃粘膜保護薬を使用して消化器症状を和らげます。
これにより、胃粘膜の保護と修復が促進されます。
生活習慣の改善
バランスの取れた食事、規則正しい生活、適度な運動、ストレスの管理が重要です。
また、禁煙や禁酒も推奨されます。
食事では、刺激の強い食品やアルコールの摂取を控えることが推奨されます。
萎縮性胃炎になりやすい人・予防の方法
萎縮性胃炎を発症する人の割合や原因から考えると、以下の事柄が挙げられます。
なりやすい人の特徴
萎縮性胃炎の原因の多くはヘリコバクター・ピロリ菌の感染です。
ピロリ菌の感染経路については経口感染とされ、特に乳幼児期に感染しやすいとされています。
衛生環境の改善のため若年者では感染率が低い傾向にあります。
今は少ないですが生水・井戸水の摂取のある方はピロリ菌感染の可能性があります。
また、自己免疫性胃炎については1型糖尿病などの自己免疫性疾患に罹患している方ではリスクが上がると言われています。
ほかにアルコール摂取の多い方、喫煙、ストレスも萎縮性胃炎のリスクとなります。
予防法
ピロリ菌は生水以外からも感染の可能性があるため完全に予防することは難しいですが、感染が確認された場合、早期に除菌することで萎縮の進行を防ぐことが出来ます。
また、野菜や果物、繊維質の多い食品を積極的に摂取し、胃に負担をかけない食事を心がけましょう。
喫煙や過度なアルコール摂取も胃粘膜に悪影響を与えるため、控えることが望ましいです。
ストレスも胃に影響を与えるため、日常生活でのストレス管理が重要です。
十分な睡眠と適度な運動、リラクゼーション法や趣味を持つことで心身のストレスを管理することも必要です。
胃に影響を与える薬剤(NSAIDsなど)の乱用は行わないようにします。
痛みなどで使用が必要な場合は、胃の保護薬を併用するなど、医師の指導の下で適切に使用します。
参考文献
ピロリ菌感染の診断と治療
H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版
慶応義塾大学病院医療・健康情報サイト
配信: Medical DOC
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