胃食道逆流症の治療
胃食道逆流症の治療は、薬物療法と生活習慣の改善が基本です。
自覚症状や食道炎の程度に応じて、内服薬が選択されます。自覚症状や食道炎が軽い場合、日常生活に気をつけるだけで不快な症状なく過ごせることもあるので、その場合は薬は不要です。
内服薬で症状の改善や食道炎の改善がみられない場合、また長期にわたって薬を飲む必要がある場合、目立った食道裂肛(しょくどうれっこう)ヘルニアがある場合などは、手術が必要になることもあります。
生活習慣の改善
胃酸の逆流防止には、以下に挙げるような生活習慣を改善することが重要です。
食べすぎ、早食いをさける
食後2~3時間は横にならない
高脂肪食、アルコール、炭酸飲料、喫煙をできるだけ控える
頭を高くして寝る
肥満の場合は減量する
便秘を解消する
ベルトや服でお腹を締め付けないようにする
長時間の前かがみの姿勢は避ける
内服治療
①胃酸の分泌を抑える薬
自覚症状や食道炎の程度に合わせて、プロトポンプ阻害薬(PPI)とカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P‐CAB)の2種類のうちいずれかを内服します。
ほとんどの場合は1〜2ヶ月薬を飲むことで、症状がやわらぎ食道炎の改善がみられます。
②胃酸を中和したり、胃酸による刺激を弱める薬
症状がでた時に補助的に使われる薬として、制酸薬、アルギン酸塩などがあります。内服後すぐに薬の効果が現れますが、効き目は20〜30分程度です。
③消化管の運動を改善する薬、漢方薬
胃酸の分泌を抑える薬で十分な効果が得られない場合に併用することがあります。
手術
大きな食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニアがみられる場合には手術が有効です。また内服治療で症状や食道炎の改善がみられない場合、長期間にわたる内服が必要となる場合にも、手術が検討されます。実際に手術するかどうかは、手術の効果やリスク(年齢や基礎疾患の有無など)を考慮して判断されます。
食道裂肛ヘルニアの手術は横隔膜まで上がってしまった胃をお腹の中に戻し、胃で食道の下部分を包み込む噴門(ふんもん)形成術をおこないます。手術することで胃酸の食道への逆流を防ぐことが可能です。
現在では、開腹手術に比べて内視鏡による腹腔鏡手術が広くおこなわれています。
胃食道逆流症になりやすい人・予防の方法
胃食道逆流症になりやすい人の特徴としては、肥満やたばこを吸う人が挙げられます。
食道と胃のつなぎめである噴門部(ふんもんぶ)は胃の内容物が食道へ逆流することを防ぐための機能がありますが、日頃の生活における動作や食事のなかに噴門部の機能を低下させるものがあります。
続けていると胃食道逆流症の症状が出現することがあるので、以下の予防法を参考に生活してみてください。
生活面での予防法
お腹まわりの締めつけ、重いものを持つ、前かがみの姿勢、右を下にして寝る、肥満、喫煙などがあります。
胃の圧迫や腹圧が上昇することで、胃酸が逆流しやすくなるため気をつけましょう。
食事面での予防法
食べ過ぎ、寝る前の食事、脂肪が多い食事、甘いもの、アルコール、チョコレート、コーヒー、炭酸飲料、みかんなどのかんきつ類の摂取などが挙げられます。
脂肪の多い食事は下部食道括約筋が緩む原因です。食後は胃酸が多く分泌されるため、食べてすぐ寝ると胃酸が逆流しやすくなります。
生活習慣や食生活を見直すことによる症状改善には個人差がありますが、肥満の解消と上半身をやや起き上がらせて寝る姿勢は、胃酸逆流防止の効果が高いといわれています。
関連する病気
食道炎
食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニア
バレット食道
食道腺がん
ぜんそく
喉頭ポリープ
歯の酸蝕症(さんしょくしょう)
参考文献
日本消化器病学会 患者さんと家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド2023
健康情報誌「消化器のひろば」No.15-3|日本消化器病学会
配信: Medical DOC
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