●男性の保育士の方が得意なこと
「国家資格を取得している育児や保育のプロである保育士にとって、ジェンダーの違いが技術の差につながるわけではありません。ですが、やはり得意・不得意はあります。例えば、男の子が力任せにぶつかるような遊び方を、女性の保育士に対して子どもは自然と控えるものです。男性保育士相手なら遠慮なくぶつかれる。そういった体力を使った遊びができるのは、男性保育士ならではですね」(菊地先生 以下同)
男性の職員がいることは防犯という面でも、安心感をもたらす効果があるそう。
「男の子が女性の保育士を慕うことが多いように、女の子は男性の保育士を慕う傾向もあります。とはいえ、結局は保育士自身の技術の問題。この仕事にはセンスも必要で、ずっと怒っている保育士もいれば、ユーモアを交えた会話を通じて子どもの積極的な行動を引き出せる保育士もいます。そういうことにジェンダーは関係ないですね。子ども自身も、男性、女性関係なく、保育士の人柄を見て懐きますから」
●保育の現場に男性がいることは当たり前の時代に
また、保育の現場に男性と女性が両方いることは、子どもの心の発育にもいい影響があるのではと、菊地先生は続ける。
「両親は男性と女性がいるのに、保育は女性というのは変だと思いませんか? 子どもたちは入った環境を当たり前のものとして感じています。男性の保育士も女性の保育士も当たり前に感じる環境のほうが自然。女性の持つ母性だけでなく男性の持つ父性も感じられた方が、子どもの心の発育にも良いのではと思ったんです」
菊地先生が20年ほど前に保育士の資格を取得し就職したときは、全国に男性の保育士が1000人ほどしかいず、女性しかいない職場で人間関係の難しさや孤独を感じたこともあるそう。しかし今は、男性保育士の存在は当たり前になりつつある。
「保育士自身がプロ意識を高く持ち、専門技術を高めていれば、保護者の方は保育士自身を信頼してくれます。そこに、性別の違いはありません。信頼関係ができていれば、『男性保育士にはおむつ替えをさせないで』と、不安を覚えることもないと思いますよ」
保育の現場に、男性と女性がいるのは自然なこと。そうした環境が整いつつあることは、子どもの価値観の形成にもいい影響を与えるといえそうだ。
(ノオト+石水典子)