「ベーチェット病」になりやすい人の特徴はご存知ですか? 原因・症状を併せて医師が解説

「ベーチェット病」になりやすい人の特徴はご存知ですか? 原因・症状を併せて医師が解説

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

ベーチェット病の概要

ベーチェット病は全身に炎症をきたす疾患です。

口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍

皮膚症状

外陰部潰瘍

眼症状

4つが主症状とよばれ、症状の発作を繰り返します。

地中海沿岸地域から中近東・日本を含む東アジアにかけて患者さんが多く認められるため、シルクロード病ともよばれています。

発症に男女差はほとんどありません。しかし、男性の方が重症化しやすいと考えられています。

ベーチェット病の主症状

口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍はいわゆる口内炎です。
ベーチェット病の場合は繰り返し再発し、強い痛みを伴います。
多くの場合は10mm以下の小さな円形で正常な粘膜との境界がはっきりした浅い潰瘍が、唇・舌・歯肉・頬の裏・口蓋など口の中の粘膜があるところにできます。

皮膚症状

皮膚症状として典型的なのは結節性紅斑様皮疹・皮下の血栓性静脈炎・毛嚢炎様皮疹です。

結節性紅斑

結節性紅斑とは下肢に好発する痛みを伴う小さな赤い湿疹で、触るとしこりがあるのがわかります。
血栓性静脈炎とは皮膚の表面に近い静脈に血栓ができることで腫れや痛みが出てくることを指します。
毛嚢炎様皮疹とはニキビの様な湿疹のことです。

外陰部潰瘍

外陰部潰瘍とは、陰部にできる潰瘍です。
見た目は口腔内潰瘍と同様に正常な部分との境界がはっきりしており、痛みを伴います。
潰瘍が深くなり治癒後に瘢痕を残すことがあります。
男性では陰嚢・陰茎・亀頭が好発部位です。
女性では大陰唇・小陰唇・膣粘膜にでき、月経周期と一致して悪化することがあります。

眼症状

眼症状としてはぶどう膜炎が重要な所見です。
発作性に生じ、ほとんどの方が両眼ともに炎症を認めます。
目の充血・痛み・視力低下・視野障害などをきたします。
発作が治ると症状も軽快します。
発作を繰り返すことで最終的に視力を失うケースもあるため、再発を繰り返さないようにすることが重要です。

4つの症状の全てが揃うと完全型とよばれますが、一部の症状しか出ない「不完全型」の患者さんもいます。

ベーチェット病の副症状

主症状のほかにもさまざまな部位に症状をきたします。
特に多いのは関節・精巣上体・腸管・血管・神経の症状です。
これらは副症状とよばれています。副症状は同様の症状をきたす疾患が多く、鑑別が重要です。

関節症状は副症状の中でも特に頻度が高く、半数以上の患者さんで起こります。膝・手首・足首・肘・肩などの大きな関節を中心に痛みや腫れが出るのが特徴です。

精巣上体の炎症は男性患者さんの1割程度に起こります。睾丸の腫れや痛みが主な症状です。

腸管病変として最も多いのは小腸から大腸に移行する回盲部の潰瘍です。右下腹部痛や下血を起こし、重症になると腸が破れてしまうこともあります。

血管の病変は動脈・静脈ともに起こる可能性があります。
もっとも多いのは静脈の血栓症です。
足などの大きめの静脈に血栓症ができ、その部位が腫れて痛みます。
時に血栓症が肺に飛んで胸痛・呼吸困難を起こす肺塞栓症をきたすこともあります。
動脈病変では血管の瘤(動脈瘤)ができたり、閉塞をしたりします。
特に肺動脈瘤ができると予後不良とされていますが、日本人患者さんには多くありません。

神経病変は男性に多く認められます。
症状は大きく2つのタイプに分類されます。
ひとつは急性の髄膜炎や脳幹脳炎をきたすものです。
一部には眼症状に使用するシクロスポリンが関わっていることがあります。
もうひとつは慢性に麻痺・人格変化・精神症状・認知機能障害などをきたし緩徐に進行するパターンです。
こちらのタイプでは、一部の方は若くして認知症症状が進行してしまうことがあります。

腸管病変・血管病変・神経病変は特殊型とよばれており、致命的になったり重篤な後遺症を残したりすることがあります。

ベーチェット病の原因

ベーチェット病の原因ははっきり分かっていません。
特定の遺伝的な素因に、細菌・ウイルスなど病原微生物の感染など外的な環境要因が加わって発症するのではないかと考えられています。
白血球の異常な活性化が起こり、強い炎症が惹起されることが発作的な症状の原因と推察されています。

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