「わが子の社会性を育てたいからと、生まれた直後から保育園などで集団生活させたり、児童館など同世代のお友だちがいる場所に通えばコミュニケーション力や社会性が早く身に付くような気がしますね。しかし、実はそうではありません。知っておいていただきたいのは、“その年齢に達しないと育たないものがある”ということです」(立石さん 以下同)
●子どもの集団生活における成長過程
例えば、保育園での各クラスの光景から、成長過程にはこんな違いが垣間見られるという。
《0歳児クラス》
「同じ場所に居ても、子ども同士が関わる様子は見られません。それぞれが玩具を手にして、好きなことをしています。関わることがあっても、保育士と自分だけだったりします」
≪1歳児クラス≫
「ほかの子がやっていることに興味関心を持ち、“真似してみようかな”とか、“あの子が持っている玩具を自分も使いたい”という気持ちが芽生えてきます。しかし、まだほかの子と協力して何かをしたいというよりも、自分の気持ちだけで動き、ほかの子と遊ぼうとはしないのです。相手の玩具を奪い取いとろうと噛みついたりする子も出てくるのがこの時期です」
≪2歳児クラス≫
「いわゆる、イヤイヤ期に突入するのが2歳ごろ。このころになると、ようやくほかの子と関わるようになりますが、自分の欲求を抑制する脳の前頭前野が未発達なため、思い通りにならないと癇癪を起すなど大騒ぎ。子ども間のトラブルも一番多い時期です」
《3歳児クラス》
「この時期になってはじめて、“社会性”がだんだんと芽生えはじめます。幼稚園が3歳からはじまるのも、社会性が育ってから集団生活へ…という意味で理にかなっています。しかし、まだ自分中心の時期。“友だちと仲良く”というよりは、けんかが多かったりします。また、“平行遊び”といって、砂場にいても、個々で何かを作っていたりするだけで、協力して山を作ったりする子はあまり見られません」
《4~5歳児クラス》
「ようやく、周りの子と楽しみを共有し、相手の痛みをわかるようになり特定の友だちができます。いわゆる、大人が考えるような“友だち関係”が築けるようになってきます。友達と協力して制作物を作ったり、鬼ごっこや隠れんぼ遊びに夢中になります」
●わが子の友だち作りに必死になる前に、しっかりした“愛着形成”を育もう!
以上のように、子どもの社会性の第一歩が芽生えるまでには、これだけの過程がある。だからこそ、焦って生まれた直後から集団生活をさせ、友達作りに必死にならなくてもいいという。それよりも、社会性を芽生えさせるために不可欠なことがあるという。
「特定の養育者との信頼関係を築いていることです。主にそれは母親であることが多いですね。0歳から1歳の時期には、“オムツが汚れている”“甘えたい”“遊んでほしい”“不安だから抱っこしてほしい”というとき、それをかなえてもらう体験です。これにより、“自分は大事にされている”という愛着が形成されます。そして、他人と関わる挑戦意欲も湧き、思いやりの心も育ち、社会性の芽生えにつながっていくのです」
大人はつい自分たちの価値感で“お友だちがいないとつまらないのでは?”“可哀想だ”と思ってしまいがち。その思いが焦りにつながってしまうのだ。
「社会性が芽生える前の子どもで、“友だちがほしい”と意識している子はいません。ママと一緒に遊ぶことはもちろん、ママが見守ってくれている安心感のなかでの一人遊びで十分楽しいのです。どうか、大人の価値観を押し付けて、『なんでお友だちと遊ばないの!』などと叱り、かえって不安感を煽るのではなく、まずは社会性の一歩を踏み出すための土台となる“愛着形成”をしっかり親子間で育んでください」
0歳から2歳ごろまでは、積極的な友だち作りよりも、“他の人がいる環境で慣れる程度”でいいそうです。どうか焦らず、この時期はじっくり親子の信頼関係を築きましょう!
(構成・文/横田裕美子)