●相手の気持ちを考えて行動できる“社会性”は、3~4歳くらいからようやく芽生えるもの
「せっかくお友だちと交流を持たせても、わが子がトラブルばかり起こして、叱っても叱ってもわかってくれない。そうなると、親御さんもどうしていいか悩んでしまいますね。しかし、人間の成長というのは、その年齢に育つものがあり、“お友だちに迷惑をかけちゃいけない”“人が嫌がることをしちゃいけない”といった相手の気持ちを考えて行動できる“社会性”というのは、3~4歳くらいからようやく芽生えるものなのです」(立石さん 以下同)
つまり、その時期の子どもは、本能のままに生きているわけで、“自分の気持ち”がすべてなのだ。
「自分が嫌だから噛みつく、たたく。自分がこのおもちゃで遊びたいから全部自分のもの。相手の気持ちは関係ありません。しかし、それはその子の性格が意地悪だとか、親の育て方が悪いとか、そういうことではありません。まだ社会性が育っていない素の状態なので、自分の欲求を素直に表現しているだけなのです。言葉もまだ出ない2歳前後はさらに噛みついたりや手が出ることも多いですね。さらに、脳の感情を抑制する前頭前野がまだ未発達なため、自分の感情が何よりも勝ってしまうと言われています」
●この時期のトラブルは、できるだけ大人が配慮して事前に防ぐように。トラブルが起こっても叱りすぎはNG!
しかし、噛みついたり、たたいたり、おもちゃを独り占めしない子もいるだけに、トラブルを起こしやすい子の親御さんは“なぜ、ウチの子は…”と、つい悩んでしまうもの。
「子どもにも生まれながらの気質というものがあります。嫌なことがあったとき、主張できるタイプの子もいれば、嫌だと思っても気が弱くて主張できない子もいます。物を独り占めできる子もいれば、欲しいと思っていても行動できない子もいます。それは、個性の違いです。でも、行動に起こさなくても“自分の気持ちがすべて”というのが、子どもなのです」
では、こういったお友だちとのトラブルに、親としてどう対処するべきなのだろうか。
「ほかのお友だちと関わるときは、できるだけ大人がトラブルを防ぐべく配慮をする。つまり、わが子の行動から目を離さないことです。この時期はそういうトラブルが起こることは仕方のないことと理解し、危険を感じたら事前に防ぐのです。もし、手遅れで友達をガブリと噛んでしまったらわが子には“コラ!ダメ!”と怒鳴ったり、親が『ほらこんなに痛いのよ』と子どもの腕を噛んで見せる悪い手本を示してはなりません。これではなぜ、それがいけないことなのか理解できないまま、親が怖いから止めるだけに終わってしまいます。
他の親御さんに謝ると同時に我が子には『手で押したり、噛んだりしないで“貸して”とお願いしようね」と教えましょう。言葉が話せなくても貸してほしいというゼスチャーを手でやらせることは出来ます」
この時期は親が頭ごなしに叱っても効果がない理由があると言う。
「この時期に、“本能のままに生きていても、受け入れてくれる人がいる”という体験を通して、人と関わる勇気が湧き、相手の気持ちを考えたり、相手の痛みがわかるようになる社会性が身に付いていくからです。この時期は、親御さんも忍耐が必要であり、大変なことも多いと思いますが、この時期の対応が、お子さんの人格形成や社会性に大きく影響しますので、お子さんのありのままをしっかり受け止めてやってくださいね」
この時期の子どものトラブルは、成長過程として仕方のないこと。そう思うだけで安心できませんか。親として、この時期をうまく乗り切る配慮や工夫をしながら、わが子の社会性をしっかり育んでやりましょう!
(構成・文/横田裕美子)