不妊治療は多くの夫婦やカップルにとって、心身ともに大きな負担となります。特に、いつ治療を終えるべきかという決断は難しいものです。今回は、「出口の見えないトンネル」とも呼ばれる不妊治療の“やめ時の考え方”について、「ソフィアレディスクリニック」の長谷川先生に解説していただきました。
監修医師:
長谷川 朋也(ソフィアレディスクリニック(長谷川LCグループ))
東京医科大学を卒業後、クリニックや総合病院で経験を積む。2019年から2年間はアメリカ・ハーバード大学へ留学し、2022年 長谷川レディースクリニック副院長、ソフィアレディスクリニック(長谷川LCグループ)の院長として就任。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。
不妊治療は本当に最終手段?
編集部
実際のところ、不妊治療を受けている人は多いのですか?
長谷川先生
そうですね。晩婚化やライフスタイルの変化に伴い、不妊治療を受けている人は増加傾向にあります。日本でも、不妊治療に対する社会的な理解や経済的支援が徐々に整いつつあり、治療を受けることへの抵抗感も少なくなってきています。
編集部
増えてきているのですね。
長谷川先生
そうですね、みなさんが思っているよりも多いと思います。「約4.4組に1組のカップルが何らかの不妊治療を経験している」というデータもあるほどです。いわゆる「タイミング法」だけでなく、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療を受けるケースも増えており、不妊治療は男女ともに身近な選択肢となっています。
編集部
不妊の原因は、女性だけでなく男性にもあるのでしょうか?
長谷川先生
WHOの調査によると「不妊の原因は男性側が48%、女性側が65%」と報告されており、男性が不妊治療を受けることは珍しいことではないとわかります。不妊は、けっして女性だけの問題ではないのです。
編集部
不妊治療を始めるタイミングはいつ頃がいいのでしょうか?
長谷川先生
年齢が上がると妊娠の確率が下がることは、いくつものデータからもはっきりしています。そのため、不妊治療を「最後の手段」と考えずに、子どもを持つことを考え始めたら、まずは早めに専門クリニックで相談することをおすすめします。また、お互いの健康状態を確認するためにも、不妊治療は有用です。
不妊治療にかかる費用
編集部
不妊治療には、保険適用されるのでしょうか?
長谷川先生
以前は保険適用外でしたが、2022年4月から一部の不妊治療が保険適用の対象となり、徐々に拡充されつつあります。ただし、年齢などによって、保険適用の範囲や回数が異なるため、事前に確認しておきましょう。
編集部
不妊治療にかかる費用が気になります。
長谷川先生
不妊治療の費用は、治療の種類や回数によって異なります。保険適用の場合、人工授精は1回あたり1~3万円程度、体外受精や顕微授精は1回あたり10〜25万円かかると考えていいでしょう。自治体の助成金制度などを活用することで、費用の負担を軽減することができます。
編集部
お金のことも考えないといけないのですね。
長谷川先生
そう思います。治療にどのくらいのお金がかけられるか、パートナーとよく話し合っておくことが大切です。予算は治療の内容を決めるうえで、大きな指針となります。ぜひ知ってほしいこととして、保険適用となっても治療費が高額になる場合に利用できる「高額療養費制度」があります。高額療養費制度とは、病院や薬局の窓口で支払った医療費が、1カ月あたりに定められた上限額よりも上回った場合に、超えた分の医療費が返金支給される制度です。
配信: Medical DOC