監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
低体温症の概要
低体温症は深部体温が35℃以下に低下することです。
体温は、皮膚温と体内の中心部を流れる血液の温度である深部体温に分けられます。
深部体温は皮膚温よりも0.5℃から1℃高く、約37度が基準値です。
健康な人は寒冷環境にさらされると、運動や震えによって熱を産生し、正常な深部体温(約37℃)を維持します。
それを上回る寒冷環境にさらされることで体温が低下することを一次性低体温症といいます。
また、寒冷環境にさらされなくても、さまざまな疾病で熱の産生が障害されたり、熱が失われることで体温が低下することを二次性低体温症といいます。
日本救急医学会で行われた全国規模の調査によると、2018年12月から2019年2月の間に全国87病院、2019年12月から2020年2月の間に全国89病院で治療が行われた低体温症の患者さんの総数は1363人と報告されています。
そのうち、1194人の患者さんを解析した結果、65歳以上の患者さんが966人(81%)、また、876人(73%)の患者さんは屋内で低体温症になっています。
低体温症の重症度
軽度(35〜32℃)
震え、軽度の意識障害(眠たくなる)を起こします。
呼吸や脈拍が早くなり、尿が増えます。
中等度(32〜28℃)
震えは消失し、意識はさらに混濁し容易に目を覚まさなくなります。
脈拍が遅くなったり、不整脈が起きたり、血圧は下がり、呼吸の回数が低下していきます。
高度(28℃以下)
深い昏睡状態になり、脈拍は消失し、呼吸は停止して死に至ることがあります。
逆説的脱衣(寒いのに服を脱いでしまう)を起こすこともあります。
低体温症の原因
一次性低体温症の原因
雪山遭難、溺水などがあります。
冷たい床や岩に接したり、冷たい風にあたったり、服が濡れて水分が蒸発し熱が奪われたりすることで低体温症になります。
二次性低体温症の原因
原因は多岐にわたり、大きく分けて熱産生障害によるものと、熱喪失によるものに分けられます。熱産生が障害される原因として、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、頭部外傷、甲状腺機能低下症に代表される内分泌疾患、エタノール中毒、低血糖、飢餓などが挙げられます。
熱を喪失する原因として、やけど、癌、感染症、重症外傷(大けが)、ショックなどが挙げられます。
これらの原因があると、自宅内のような温かい場所にいても、低体温症になり得ます。低体温症は雪山でしか起きないというわけではありません。
配信: Medical DOC