「肘内障」になりやすい人の特徴はご存知ですか? 原因・症状を併せて医師が解説

「肘内障」になりやすい人の特徴はご存知ですか? 原因・症状を併せて医師が解説

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)

信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

肘内障の概要

肘内障(ちゅうないしょう)とは、肘に起こる小児特有の亜脱臼です。「腕が抜けた」「肘が外れた」などと表現されることも多いですが、実際は肘を構成する骨である橈骨(橈骨頭)が靭帯(橈骨輪状靭帯)からずれた状態のことを指します。

肘内障は2〜6歳程度の小児に頻発し、7歳以上では発症しにくくなる特徴があります。親と手を繋いでいる時に転倒する、子ども同士のケンカで引っ張り合うなど、手を引っ張られることで発症するケースが多いです。しかし親が見ていないところでの転倒や、赤ちゃんの寝返りなどで発症する可能性もあり、原因がはっきりしないことも少なくありません。

肘内障を発症すると痛みによって腕を動かせなくなり、少し肘を曲げたまま腕を下げた姿勢になることが特徴です。

肘内障では骨折や脱臼の鑑別のためにレントゲン検査を行うこともありますが、レントゲン検査では異常な所見は得られません。前腕を回外(手のひらを上に向ける動作)させつつ橈骨頭を抑え、ゆっくり肘を曲げていくと整復されます。

整復によって橈骨頭が元の位置に戻ると途端に腕を動かすようになり、大きく泣いている子どもが泣き止むことも珍しくありません。固定も必要ないことがほとんどで、日常生活では特に制限することなく腕を動かせます。ただし、腕を引っ張ると再発の恐れがあるため注意が必要です。

肘内障の原因

肘内障の主な原因は、何らかのきっかけで肘関節から橈骨頭が外れる力が加わることです。
肘内障が発症する具体的なシチュエーションとしては、以下のようなことが挙げられます。

子どもと手を繋いでいて、転びそうになったため引っ張った

子ども同士がケンカして引っ張りあった

転んで手をついた

赤ちゃんが寝返りした際に腕が引っかかった

このように、手を引っ張られることや転倒などの外力によって橈骨頭が橈骨輪状靭帯からずれることで肘内障を発症します。
橈骨は手のひらを上・下に向けるという捻る動作で主に動く骨であり、橈骨輪状靭帯はその動きを支えて関節内から外れないよう留めてくれる靭帯です。しかし、小児では橈骨輪状靭帯が発達しきっておらず、支えが不十分であるために肘内障が発症します。

そのため、肘内障の多くは橈骨輪状靭帯の発達が不十分な2〜6歳程度の幼児期に発症し、成長と共に発症しにくくなることが特徴です。しかし、まれに6歳以上でも肘内障を発症することがあります。

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