「肛門周囲膿瘍」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

「肛門周囲膿瘍」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

肛門周囲膿瘍の治療

肛門周囲膿瘍では、皮膚を切開し排膿するドレナージ術が第一選択であり、早急な治療が必要です。

蜂窩織炎(ほうかしきえん)や糖尿病、心臓弁膜症などの基礎疾患がある場合や、免疫が低下している状態、クローン病の合併症として発症している場合では、切開ドレナージだけでなく、抗生剤を用いた薬物療法を行うこともあります。

痔瘻が原因で潰瘍が発生している場合は自然治癒が難しく手術が行われますが、乳児の肛門周囲膿瘍では自然治癒することが多く保存的治療が検討されます。

ドレナージ術

肛門周囲膿瘍はできるだけ早く、速やかなドレナージ術をすることが重要です。

膿瘍が発生した部位や大きさによってドレナージ術の内容が異なります。

比較的浅い部分に発生した膿瘍のドレナージでは、局所麻酔で対応可能ですが、肛門の奥にできる膿瘍では、局所麻酔では十分な鎮痛効果が期待できないため、腰椎麻酔や仙椎硬膜外麻酔が検討されます。

薬物療法

薬物療法は免疫力が低下して感染症になりやすい状態の人や、蜂窩織炎や糖尿病、心臓弁膜症を合併している場合に行います。

肛門周囲膿瘍の原因は複数の細菌が関与している場合が多いため、肛門周囲膿瘍の治療では複数の抗菌薬を使用します。

クローン病を患っていて肛門周囲膿瘍や痔瘻を合併している場合では、メトロニダゾールやニューキノロン系、セフェム系の抗菌薬を投与します。

手術

肛門周囲膿瘍の原因が痔瘻である場合には、根本的な治療として手術を行います。

比較的浅い部分に発生した膿瘍の場合は、瘻管を肛門側の原発口から皮膚側の二次口まで切り開く開放術式を行います。

前側方の痔瘻や括約筋機能が低下している場合は括約筋温存術式や、瘻管に紐状の医療器具を挿入して縛るシートン法が適応になります。
シートン法はクローン病によって痔瘻が合併している場合にも適応されます。

肛門周囲膿瘍になりやすい人・予防の方法

蜂窩織炎や糖尿病、心臓弁膜症などの基礎疾患がある人や免疫力が低下している人は、肛門周囲膿瘍になるリスクが高いと言われています。

肛門周囲膿瘍の大半は細菌感染であり、下痢が発症の原因となることが報告されています。

免疫力が低下しないように規則正しい生活習慣を心がけ、体調管理に努めることが予防に効果的です。

関連する病気痔瘻

壊疽性筋膜炎

糖尿病

免疫不全

裂肛(切れ痔)

クローン病

結核

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)

痔核(いぼ痔)

直腸がん潰瘍性大腸炎

心臓弁膜症

蜂窩織炎(ほうかしきえん)

敗血症

参考文献

肛門疾患診療ガイドライン 2020年版

日本大腸肛門病学会雑誌「壊疽性筋膜炎の7症例」

日本大腸肛門病学会雑誌「痔瘻診療の標準化をめざして Ⅱ.痔瘻の診断」

日本大腸肛門病学会会誌「エビデンスに基づいた直腸肛門周囲膿瘍

岡本欣也、那須聡果、東侑生「Ⅴ.痔瘻の手術─新しい試み,工夫」

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