「上顎洞炎」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

「上顎洞炎」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

上顎洞炎の治療

上顎洞炎の治療には、薬物療法や局所療法、手術療法の3つがあります。
急性期または慢性期、原因によって治療法が異なります。

薬物療法

急性上顎洞炎の場合は1週間程度抗菌薬を使用するほか、痰を出しやすくする薬やアレルギーを抑える薬、ステロイドの点鼻薬などを併用することもあります。
慢性上顎洞炎の場合は、急に症状が悪化しない限り強い抗生物質は必要なく、抗菌薬を通常の半分の量で3か月程度長期間服用する方法(マクロライド少量長期投与)が選択されます。

単独での効果ははっきりしていませんが、鼻の粘液を調整する薬や溶かす薬が使われることがあります。
嗅覚障害がある場合は、ステロイド薬の点鼻や経口投与が有効とされています。

局所療法

局所療法では副鼻腔洗浄やネブライザー療法によって鼻の中を洗浄して、通り道を広げる処置を行います。
急性期の重症例や慢性上顎洞炎の急性増悪時では、鼻の中から針を刺して上顎洞の洗浄や薬剤の投与を行う上顎洞穿刺・洗浄が有効です。
ネブライザー療法は急性上顎洞炎に対して有効ですが、慢性上顎洞炎に対する効果ははっきりしていません。

手術療法

薬物療法や局所療法で効果がない場合や、鼻の中に大きなポリープがある場合、歯性上顎洞炎が起きている場合は手術療法の対象になります。

手術では内視鏡を利用しながら、鼻の中のポリープを取り除いたり、副鼻腔内の病的な粘膜を切除した後に、副鼻腔を広く開放し溜まっている膿を排出させます。

手術と同時に、鼻中隔の弯曲を矯正し、鼻づまりを改善することもあります。

手術後は自宅で内服薬や点鼻薬の投与や鼻洗浄を行いながら、定期的に通院して鼻の処置を受けます。

上顎洞炎になりやすい人・予防の方法

上顎洞炎になりやすい要因として、喘息や慢性気管支炎の既往歴や、高年齢、肥満、喫煙歴などがあります。
気管の炎症と上顎洞炎は関連しているため、喘息や慢性気管支炎の既往がある方は注意しましょう。
喫煙は鼻や喉の粘膜を傷つけてあらゆるウイルスや細菌が感染しやすくなります。鼻や喉の健康を保つためには、喫煙を控えてください。

アレルギー性鼻炎や風邪を頻繁に引く方は、炎症が副鼻腔に広がり上顎洞炎を引き起こすことがあります。
バランスの取れた食事や十分な睡眠、適度な運動を心がけて免疫力を高めましょう。

虫歯や歯周病が進行すると細菌が上顎洞に入り込みやすくなり、歯性上顎洞炎の原因となります。
予防には定期的な歯科検診を受け、虫歯や歯周病の早期発見と早期治療が重要です。

関連する病気副鼻腔炎アレルギー性鼻炎

風邪症候群

歯周病

う蝕症

咽頭炎中耳炎気管支炎

参考文献

髙橋富久 著 · 2019上顎洞の解剖と脈管,神経分布

専攻医トレーニング講座慢性副鼻腔炎の病態分類

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会鼻の病気

専門医講習会テキストシリーズガイドライン・手引きからみた副鼻腔炎の治療

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター蓄膿になりやすいのはどういう人?

歯科放射 2020 60巻 上顎洞炎のリスクファクターとしての自然孔の位置に関する研究

耳展 2010歯科インプラント治療に伴う上顎洞炎

上顎洞炎の1例【JST・京大機械翻訳】

耳鼻臨床 1987 片側上顎洞炎の検出菌の特徴と 薬剤選択

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