広場恐怖症の前兆や初期症状
広場恐怖症は、特定の「状況」や「認知」に対して恐怖や不安を抱き、その場を回避しようとしますが、特定の状況や認知は人によって異なります。
安全な場所(通常は自宅)に逃げることが困難だと思うときなども挙げられます。
多くの場合、公衆の面前で倒れ、孤立無援となることを想像して、通常の人では起こらないような顕著で過剰な恐怖または不安となります。
具体的には広場恐怖症の前兆や初期症状には以下のようなものがあります。
公共の場所への恐怖
店やショッピングモール、映画館、雑踏など公衆の場に入るとき、電車やバス、飛行機といった公共の交通機関を利用するときなどがストレスとなるため、広い空間や人混みを避けるようになります。
そのため、エレベーターを避けて階段を使う、などの恐怖を感じる場所や状況を避けるための行動が増えます。
外出時の強い不安
外出する際に強い不安感や恐怖感が起こることが多くなります。
パニック発作
パニック発作が発生するのではないかという恐怖感が強くなります。
実際にパニック発作が生じることもあります。
パニック発作を伴う場合は、恐怖症の重症さの現れとも言われています。
社会的孤立
恐怖感から、結果として社会的な活動を避けるようになり、友人や家族との交流が減少します。
このような症状が現れた際は心療内科、精神科を受診しましょう。
広場恐怖症の検査・診断
広場恐怖症の診断は、臨床面接、心理検査、医療歴の評価などを通じて行われます。
正確な診断を行うためには多面的なアプローチが必要です。
以下に、広場恐怖症の診断方法を説明します。
臨床面接
症状の評価
精神科医や心理カウンセラーなどが患者さんと面接を行い、具体的な症状、発症時期、頻度、持続時間、症状の重症度などを評価します。
家族歴および医療歴の確認
広場恐怖症のリスクを評価するために、家族歴や過去の医療歴についても質問します。
不安症やパニック症の家族歴があるかどうか、過去にパニック発作を経験したことがあるかどうか、などを確認します。
生活歴の調査
幼少期のトラウマやストレスフルな出来事、現在の生活環境やストレス要因についても詳細に調査されます。
心理検査(広場恐怖症尺度)
広場恐怖症の症状の重症度を評価するための自己報告式の質問票です。
患者さんが経験する不安や恐怖の具体的な状況、頻度、強度を評価します。
補助的な検査
広場恐怖症の診断を行う際には、ほかの身体疾患(甲状腺機能異常や心臓疾患など)を除外するための身体検査や血液検査も行われることがあります。
診断基準
広場恐怖症の診断には、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)やICD-10(国際疾病分類第10版)の診断基準が用いられていました。
近年、DSM-5-TRやICD-11が発表されており今後はその診断基準が使われるようになると考えられますが、以下では現在広く使われているDSM-5とICD-10を引用します。
DSM-5 診断基準
特定の場所や状況に対する強い恐怖または不安
その状況を避ける、または強い不安を感じながら耐える
恐怖や不安が過度であり、実際の危険や社会的・職業的機能に重大な影響を与える
症状が6か月以上持続する
ほかの精神障害や身体疾患では説明できない
ICD-10 診断基準
公共の場所や広い空間に対する恐怖または不安
恐怖が過度であり、日常生活に重大な影響を与える
症状が6か月以上持続する
ほかの精神障害や身体疾患では説明できない
配信: Medical DOC