「天疱瘡」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

「天疱瘡」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

天疱瘡の治療

天疱瘡の治療は、主にステロイド療法によって自己抗体の産生やはたらきを抑えて、粘膜や皮膚の症状の改善を図ります。
ステロイド療法で効果が十分に現われない場合や、副作用が強く日常生活に支障をきたす場合は、免疫グロブリン製剤の投与や血漿交換療法、抗CD20抗体療法などをおこないます。

免疫グロブリン製剤と血漿交換療法は即効性がありますが、効果が一時的であることも多いため、できる限りステロイド療法と併用するケースが多いです。
治療内容は症状の重症度や患者の全身状態に合わせて方針が決定されます。

ステロイド療法

天疱瘡の治療ではステロイド剤を投与し、自己抗体の産生を抑制します。
特に中等症や重症の場合は、治療初期に入院して大量のステロイド剤を点滴で投与し、水疱の形成に改善がみられたら、徐々に量を減らしていきます。

病状が落ち着いた頃に通院治療に移行し、日常生活を送りながら自宅でステロイド剤を内服します。
ステロイド剤は自己判断で内服を中止するとショック状態が起きたり、水疱が再発することがあるため、必ず指示された量を守ることが重要です。

易感染症(いかんせんしょう)や糖尿病、骨粗鬆症、胃潰瘍、高血圧などの副作用もあるため、発熱や体調不良などの症状が見られたら早めに受診しましょう。

免疫グロブリン製剤

免疫グロブリン製剤は健康な人の血液から抽出された抗体を含む製剤で、自己抗体の作用を中和し、免疫系の異常な反応を抑制することで症状の改善に効果があります。
通常では高用量の免疫グロブリンを数日間にわたって点滴投与します。

重症例でも効果が期待できますが、まれにアナフィラキシーショックや心不全などの副作用が起こる可能性があるため、慎重に適応を判断する必要があります。

血漿交換療法

血漿交換療法は患者の血液から自己抗体を含む血漿を除去し、健康な血漿や血漿代替液と置換する治療法です。
循環血液中の病因となる自己抗体を減少させることで、症状の改善が期待できます。

治療の頻度は重症度によって異なりますが、1回の治療で患者の血漿量の約1〜1.5倍を交換します。
副作用として血圧の低下や感染症のリスクがあるため、慎重な管理が必要です。

抗CD20抗体療法

抗CD20抗体療法は、B細胞の表面に現われるCD20抗原に特異的に結合し、抗体産生に関わるB細胞を選択的に除去する治療法です。
リツキシマブなどの抗CD20モノクローナルによって天疱瘡の原因になるB細胞を除去することで、自己抗体の産生を抑制し、症状の改善を図ります。

抗CD20抗体療法は2021年12月から難治性の天疱瘡に対する保険診療が認められ、ステロイド療法で効果が不十分なときの選択肢の一つとなっています。

天疱瘡になりやすい人・予防の方法

天疱瘡になりやすい人や予防の方法はわかっていません。

天疱瘡は症状の悪化を防ぐために、早めに発見して皮膚科を受診することが重要です。
発症した後は皮膚の水疱やびらんを悪化させないために、着脱しやすく綿などのやわらかい素材でできた衣類を着用します。

粘膜の水疱が強いときは硬い食べ物を避け、歯磨きで口腔内の水疱やびらんを刺激しないように気をつけましょう。

関連する病気

尋常性天疱瘡

落葉状天疱瘡

腫瘍随伴性天疱瘡

増殖性天疱瘡(ぞうしょくせいてんぽうそう)

紅斑性天疱瘡(こうはんせいてんぽうそう)

疱疹状天疱瘡(ほうしんじょうてんぽうそう)

薬剤誘発性天疱瘡

眼天疱瘡

IgA天疱瘡

参考文献

難病情報センター天疱瘡(指定難病35)

公益社団法人日本皮膚科学会皮膚科Q&A天疱瘡

一般社団法人日本血液製剤協会血液製剤について

厚生労働省35天疱瘡

日本皮膚科学会ガイドライン天疱瘡診療ガイドライン

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