腸チフスの治療
腸チフスでは、抗菌薬による治療が主となります。 以前は、ニューキノロン系抗菌薬が第一選択薬として使用されてきましたが、この薬が効かない耐性菌が出現、増加してきており、特に南アジアからの帰国者では、ニューキノロンへの耐性菌の割合が多くなってきたため避けるようになりました。
このような状況を受けて、現在では第三世代セファロスポリン系抗菌薬やアジスロマイシンが治療に使われるようになっていますが、日本では保険適用とされていません。さらに近年は、第三世代セファロスポリン系抗菌薬やアジスロマイシンに対しての耐性菌が確認されたことも報告されており、治療が難しくなっていくことが考えられています。
抗菌薬での治療は、点滴や経口薬で2週間ほど継続して行われ、症状が改善した後も体内に菌が残っているかどうかを確認するために、便培養検査が必要です。
胆石が原因で菌が体内に残る可能性がある場合は、胆のう摘出手術が必要になることもあります。
適切な治療が行われなければ、長期にわたって保菌者となり、感染を広げることになるため、自身の健康だけでなく周囲の健康を守るためにも迅速な治療が重要となります。
腸チフスになりやすい人・予防の方法
腸チフスになりやすい人は、衛生環境が整っていない地域に住んでいる、またはそのような地域に渡航する人に多いです。
発展途上国や水道設備が不十分な場所では、チフス菌が蔓延している可能性が高いです。それに伴い、腸チフス感染者も多い傾向があるため、感染者と接触することで、病気が広がる可能性があります。
予防としては、腸チフスの発症が多い地域への渡航を避けるのが一番の予防方法です。もしそういった地域に渡航する場合は、飲食物に細心の注意を払いましょう。また石鹸などを利用して清潔な水で手洗いを行うことも重要です。
特に発展途上国では、ビンに入ったミネラルウォーターを飲んだり、一度沸騰させた水を摂取するようにしてください。食材を水で洗うだけでも、チフス菌が食材に感染するおそれがあるため、注意しなければなりません。
また、生の野菜や果物、調理が不十分な肉や魚は、チフス菌に汚染されている可能性があるため、避けるべきです。
上記に加えて、予防接種も腸チフスの発症予防に効果的です。腸チフスが流行している地域に渡航する際には、事前にワクチンを接種することが推奨されることがあります。
ただし、国内には承認されている腸チフスのワクチンはないため、一部の医療機関で受けられる海外からの輸入ワクチンを接種する必要があります。
関連する病気
サルモネラ感染症
A型肝炎
胃腸炎
パラチフス
アメーバ赤痢
参考文献
一般社団法人日本感染症学会「腸チフス・パラチフス」
日本臨床微生物学会「腸チフス・パラチフス」
一般社団法人日本感染書学会「JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―腸管感染症―」
NID国立感染症研究所「腸チフス・パラチフスとは」
今日の臨床サポート「腸チフス・パラチフス」
厚生労働省「腸チフス」
厚生労働省検疫所 FORTH「腸チフス(ファクトシート)」
配信: Medical DOC
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