「肺血栓塞栓症」になりやすい人の特徴はご存知ですか? 原因・症状を併せて医師が解説

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肺血栓塞栓症の治療

肺血栓塞栓症では、急性肺血栓塞栓症と慢性肺血栓塞栓症で治療法が大きく異なります。

急性肺血栓塞栓症の治療

急性肺血栓塞栓症では、以下のような治療法を組み合わせて治療が行われます。

呼吸循環管理

薬物療法

カテーテル治療

下大静脈フィルター挿入術

呼吸循環管理

呼吸循環管理による治療では、以下のような治療法が行われます。
緊急性によっては、複数の治療法が組み合わされることもあります。

治療方法
適応

酸素投与
低酸素血症

薬物療法(昇圧薬)
ショック、低血圧

PCPS(経皮的心肺補助装置)
血液循環不全(循環虚脱)、心停止

呼吸循環管理では血栓を取り除けないため、他の治療と並行して治療を行います。

薬物療法

肺血栓塞栓症の薬物療法では、血を固まりにくくする抗凝固療法と固まった血栓を溶かす血栓溶解療法があり、以下のような薬を使用します。

治療法
薬の種類

抗凝固療法
未分化へパリン(急性期)
DOAC(急性期)
ワルファリン(慢性期)

血栓溶解療法
モンテプラーゼ

血栓溶解療法は、抗凝固療法よりも血栓を溶かすことに優れることから、ショック状態や低血圧状態のような血液の流れが安定しない重症例や広範囲に血栓がある場合に行われます。

カテーテル治療

肺血栓塞栓症のカテーテル治療では、カテーテルから血栓溶解薬(モンテプラーゼ)を投与する方法や、肺動脈に詰まった血栓をカテーテルを用いて除去する方法が行われます。

カテーテル治療は、肺動脈の広範囲に血栓があり薬物治療でも血流状態が改善されず血液の流れが安定しない人が対象です。

下大静脈フィルター挿入術

下大静脈フィルターは、骨盤や脚の静脈に発生した血栓が肺動脈に詰まることを防ぐための器具です。

手術では、静脈に注射した部分にカテーテルを挿入し、下大静脈まで進めて静脈の壁に固定します。

下大静脈フィルター挿入術は出血があり抗凝固療法を使うことができない場合、もしくは十分な抗凝固療法中でも肺血栓塞栓症の悪化や再発をきたす場合が対象です。
慢性肺血栓塞栓症で動いたときの息苦しさが以前よりも強くなっている場合は、早急な治療が必要です。

慢性肺血栓塞栓症の治療では、主に以下のような治療法が行われます。

外科手術

カテーテル治療

内科治療

外科手術

慢性肺血栓塞栓症の治療では外科治療が第一選択であり、肺動脈内膜摘除術(PEA)という手術が行われます。

肺動脈内膜摘除術は、胸部を切開し肺動脈を内膜と一緒に剥離することで血栓を摘出する手術であり、予後の改善が期待できます。

肺動脈内膜摘除術は肺動脈の中枢部分にできた血栓が治療対象ですが、身体に負担がかかるため高齢あるいは他の合併症がある場合は手術ができません。

カテーテル治療

肺動脈内膜摘除術を行うことができない場合には、カテーテル治療が検討されます。
慢性肺血栓塞栓症のカテーテル治療では、バルーン肺動脈拡張術(BPA)が行われます。

バルーン肺動脈拡張術は、静脈の注射箇所に挿入したカテーテルを肺動脈まで進め、血栓が付着した箇所でバルーンを膨らませることで細くなっている肺動脈を広げる治療法です。

カテーテル治療は、肺動脈の末梢に血栓が存在する場合や合併症により肺動脈内膜摘除術を行うことができない場合、肺動脈内膜摘除術で肺高血圧症が治らなかった場合の症状改善のために行われます。

内科的治療

慢性肺血栓塞栓症の内科的治療では、投薬や酸素投与が行われます。
投薬治療では主にリオシグアトやセレキシパグなどの肺血管拡張薬や、血液を固まりにくくする抗凝固薬を服用します。

肺血管拡張薬の服用は肺動脈内膜摘除術やバルーン肺動脈拡張術ができない場合や、治療によって肺高血圧症が治らなかった場合、治療後に再発した慢性肺血栓塞栓症を対象に治療を行います。
抗凝固薬には主にワルファリンが用いられており、慢性肺血栓塞栓症を発症した場合は生涯服用し続ける必要があります。

心不全を合併している場合には利尿薬や強心薬、低酸素血症がある場合は酸素投与が行われます。

肺血栓塞栓症になりやすい人・予防の方法

長時間脚を動かさないでいる状態は、急性肺血栓塞栓症のリスクを高めるため、災害中の避難生活では発症リスクが高まることが報告されています。

以下に当てはまる人も急性肺血栓塞栓症のリスクが高まるので注意が必要です。

下肢静脈瘤

がん

深部静脈血栓症

心筋梗塞、脳梗塞

下肢の手術歴がある

骨折などの怪我がある

生活習慣病にかかっている

経口避妊薬を使用している

妊娠中もしくは出産直後である

肺血栓塞栓症の予防には長時間同じ姿勢でいることを避け、歩いたり脚を動かす習慣をつけることが大切です。

適度な水分摂取をして脱水を避けることも予防に効果があります。

関連する病気

肺高血圧症

心不全下肢静脈瘤

がん

深部静脈血栓症

心筋梗塞脳梗塞骨折生活習慣病

参考文献

肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン

公益財団法人 難病情報センター

日本血栓止血学会誌 「肺血栓塞栓症(PTE)の診断と治療」

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH) 診療ガイドライン

厚生労働省 「深部静脈血栓症/肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)について」

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