「無気肺」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

「無気肺」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

監修医師:
関口 亮(医師)

2016年東邦大学医学部卒業 / 2016-2018年東邦大学佐倉病院初期研修 / 2018年〜東邦大学大森病院呼吸器内科所属 / 2019年ー2020年国立病院機構東京病院呼吸器内科出向 / 2020年〜現在まで東邦大学大森病院呼吸器内科に勤務 / 2024年4月よりハピコワ会ハピコワクリニック転職予定 / 専門内科、呼吸器内科、アレルギー

無気肺の概要

無気肺とは、気道(空気の通り道)の圧迫や閉塞などによって肺の一部分、もしくは全体が虚脱(しぼむ・押しつぶされる)し、空気が入らなくなる状態のことです。

肺の主な機能は、体内に酸素を取り込んで、二酸化炭素を排出することです。この機能はガス交換と言われ、肺の中にある小さな袋(肺胞)が空気で満たされなければ正常に機能しません。

無気肺が発生すると肺胞まで十分な空気が届かなくなり、ガス交換が不十分になります。酸素がうまく取り込めなくなるため、その結果として息切れや咳などの症状が現れます。

無気肺が広がると、症状がさらに悪化する可能性があり、呼吸困難や低酸素血症など深刻な状態に進行する恐れもあります。

適切な診断と治療が遅れると、肺の機能が著しく損なわれることがあるため注意が不可欠です。

無気肺の原因

無気肺の主な原因は、次の2つです。

気道の閉塞

肺への外的圧力

気道の閉塞

気道閉塞の原因には痰の滞留や異物の侵入、腫瘍(がん)などがあります。これらが気道を塞ぐことで肺に空気が届かなくなり、無気肺が発生します。特に、右中葉気管支は細く、入口付近でリンパ節が腫れたり、分泌物が溜まったりすることで無気肺を起こしやすくなります。

高齢者や慢性呼吸器疾患を持つ人は痰の排出が難しいため、無気肺のリスクが増大します。喫煙歴がある人は肺の機能が低下していることが多く、加えて分泌物が増えるため、無気肺になるリスクがより高まります。

また、吸引不全や人工呼吸器の設定不良なども無気肺が発生する原因です。気道の分泌物が適切に除去できない場合は気道が塞がり、肺の一部が十分に膨らまなくなるからです。

さらに、人工呼吸器が適切な圧力を供給できない場合は、肺の膨らみが不十分になり、無気肺を引き起こすことがあります。

これらの要因が重なると、肺の機能が著しく低下して症状が悪化する可能性があるため、適切な管理が必要です。

肺への外的圧力

肺への外的圧力が原因で無気肺が発生することがあります。

外的圧力の主な原因には胸部の外傷(転倒や交通事故)や手術後の状態、長期間の臥床などが挙げられます。肺が正常に膨らむための空間が圧迫によって失われることで無気肺が起こります。

特に、術後や長期間のベッド上での生活では、重力や体位によって肺が圧迫されるため、無気肺のリスクが高まります。

これらの状況下では、胸の内部空間の圧力が高まるため、肺が十分に膨らむスペースを確保できません。その結果、空気が肺に入らず、無気肺が引き起こされるのです。

無気肺が進行すると、呼吸困難や酸素不足などを引き起こす可能性があるため、早期の診断と適切な処置が重要です。

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