超音波検査でゼリーを塗るのはなぜ?Medical DOC監修医がエコーゼリーの目的や当日の注意事項・発見できる病気・検査結果の見方等を解説。
監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
超音波検査でゼリーを塗るのはどうして?
超音波検査を受ける時は、身体に直接ゼリーを塗られたり、ゼリーをつけた機械を体に当てられたりします。ぬるぬるして気持ちが悪く感じるかもしれませんが、このゼリーがなければ超音波検査は成り立ちません。
この記事では、超音波検査でエコーゼリーを塗る理由や、超音波検査の注意点や結果の見方などを解説します。
超音波検査とは?
超音波検査とは、超音波を利用した生理機能検査の一種です。プローブと呼ばれる機械を身体の表面にあてて超音波を検査対象の臓器に反射させ、跳ね返ってきた超音波を画像として映し出します。
放射線を使わないので被ばくの心配がありません。そのため、妊娠中の方でも検査が可能であり、何度でも繰り返し手軽に行えます。リアルタイムで臓器を観察できるのが大きな特徴です。
肝臓や乳腺などの超音波検査では、検査目的によっては造影剤を使用して血流を詳細に観察することもあります。一方、超音波を通さない骨や、超音波をほとんど通さない空気で満たされた肺などは検査困難となります。
超音波検査でゼリーを塗る目的とは?
なぜ超音波検査でゼリーを塗るのかというと、検査において必要不可欠なものだからです。
超音波検査で使われるゼリーには、大切な役目が3つあります。
1つめは、超音波を通さない空気の隙間を埋めることです。前述の通り、超音波は骨や空気を通過できません。ゼリーがなければ画像として映し出すことは非常に困難です。
2つめは、プローブが滑らかに動くようにすることです。これによって、検査の際に、必要な部位を正確に観察することが可能となります。
3つめは、皮膚とプローブが直接接触するのを防ぐことで、皮膚の摩擦や刺激を和らげる役割もあります。
超音波検査の費用は?
保険適用の有無や保険適用の場合の負担率の違いなどにより、超音波検査の費用は変わってきます。
検査を行った部位によって違いがあります。一般的な超音波検査において保険適用の3割負担では、目安として
・腹部:約1,600円
・下肢血管:約1,350円
・四肢、体表(乳腺、甲状腺など)、末梢血管:約1,050円
・心臓:約2,640円
程度が見込まれます。
さらに、造影剤の使用や特殊な状況下での検査の場合は追加で費用がかかります。
詳しくは医療機関でご確認ください。
超音波検査前日や当日の注意点
身体のどの部分の検査を受けるかにより、注意点は異なります。
肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓などの上腹部の超音波検査を受ける場合は、胃の内容物できちんと観察できなくなってしまいます。検査の数時間前から食事はできません。具体的な時間の指示は医療機関によって異なりますので、確認しておきましょう。
また、膀胱や子宮、前立腺など骨盤内の臓器を観察する時は膀胱にある程度尿が溜まっている方が観察しやすくなります。検査の前は排尿を控えるようにしましょう。
超音波検査は素肌にゼリーを塗って検査しますので、検査を受ける臓器によっては上下に分れた着脱しやすい服装だとスムーズに検査が受けられるでしょう。
なるべく正確な検査となるように、検査を受ける時に医療機関で受けた説明を守るようにしてください。
超音波検査でゼリーを塗った箇所がかぶれたりかゆみが出た場合の対処方法は
もし検査後にゼリーが塗られた場所にかゆみやかぶれなどの症状が起こった場合、まずはかゆみのある場所を冷やすようにしましょう。かゆみが和らぐことがあります。かゆみやかぶれの症状が続く場合には、皮膚科を受診しましょう。経過観察でも改善がみられる場合が多いと考えられますが、かゆみが強い場合などには外用薬などが処方されることもあります。
超音波検査で使われるゼリーの成分は、メーカーによる違いもありますが、主に水、グリセリン、カーボンポール樹脂、pH調節剤、中和剤、防腐剤など[佐々木祐子1] です。製品によっては、銀系抗菌剤や浸透型コラーゲンを含んだものもあります。[佐々木祐子2]
これらの成分にアレルギーがある場合はかゆみやかぶれを起こす可能性があります。ゼリーに含まれる防腐剤の一種であるメチルパラベンでアレルギーが起こったという報告もあります。
超音波用のゼリーには多くの成分が含まれているので、何がアレルギーの原因かわからないこともあります。そのため、超音波検査でかゆみやかぶれなどがあった場合、次回以降に超音波検査を受ける際には、その旨を医療機関へと伝えることが大切です。超音波検査後すぐに、しっかりとゼリーを拭き取ることで、症状が再度現れることを予防できたとする報告もあります。
超音波検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは超音波検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
超音波検査の結果の見方・分類と主な所見
人間ドックや健康診断において、超音波検査の結果には診断名や所見名(検査者の意見)と、それに対するカテゴリー判定区分が記載されます。
それぞれの臓器に対して各学会が判定基準を設けていますが、それらを元にして施設独自の基準が設けられていることもあります。
一般的に「良性悪性の判断が困難」「悪性の可能性が高い」「明らかな悪性」「高危険軍」などとされた場合は、精密検査の受診が勧められます。
「異常なし」「良性」などの場合、精密検査は必要ありません。
超音波検査の結果で精密検査が必要な基準と内容
超音波検査で精密検査が勧められた場合、どの臓器が対象となるかで受診すべき診療科が異なります。
肝臓、胆嚢などの消化器なら消化器内科、心臓なら循環器内科、乳腺なら乳腺外科を受診します。健康診断の検査結果を見ただけでは緊急度が判断できないこともあるため、なるべく早い受診が望ましいでしょう。
医療機関で超音波検査を含めて再検査を行い、必要に応じて治療方針が決定されます。
対象となる臓器と診断名によって治療内容は異なりますが、薬物療法や手術などが行われることもあります。
配信: Medical DOC