臼蓋形成不全の治療
臼蓋形成不全の治療では保存的治療、薬物療法、手術の3つが選択されます。
症状の程度によっては複数の方法を組み合わせながら治療を行います。
保存的治療
臼蓋形成不全で変形性股関節症が起きている場合の保存的治療は、患者教育や運動療法などがあります。
患者教育には股関節の解剖や疾患に関する知識の習得のほか、日常生活の動作や環境の改善などがあり、運動療法ではウォーキングやジョギングのような有酸素運動や筋肉トレーニング、水中運動などが行われます。
患者教育や運動療法は、疼痛や股関節の機能改善に効果があることが報告されています。
薬物療法
臼蓋形成不全により変形性股関節症を発症した場合や、痛みの症状が強い場合には薬物療法が行われます。
薬物療法では、アセトアミノフェンや非ステロイド性の抗炎症薬(NSAIDs)、トラマドールなどのさまざまな薬剤が痛みの緩和に有効であることが報告されています。
薬物療法は一時的な症状緩和に効果的で、短期的に股関節の働きを改善するために選択されます。
手術
臼蓋形成不全の手術には、関節温存術と人工股関節全置換術(THA)の2つがあります。
関節温存術
関節温存術は、股関節を切除せずに、骨盤と大腿骨の位置を調整することで関節の機能を改善する手術です。
関節温存術は骨頭の変形や臼蓋形成不全の程度、症状の進行度、年齢などを考慮して適切な方法が選択されます。
臼蓋形成不全の程度が強い場合には、臼蓋の部分に骨移植を行って大腿骨頭と接触する部分を大きくする臼蓋形成術をあわせて行う場合もあります。
関節温存術は初期の変形股関節症が適応で、青年期から壮年期(15-44歳)を対象に行われる手術であり、症状の緩和や進行の予防を目的に行います。
人工股関節全置換術(THA)
人工股関節全置換術は、股関節を人工股関節に取り替える手術です。
人工関節の材質にはチタンやコバルトなどの金属やセラミック、ポリエチレンなどが使われており、変形性股関節症によってダメージを受けた股関節や関節軟骨を人工関節に変えて固定し、痛みの症状を緩和します。
人工股関節全置換術は進行した変形性股関節症が適応であり、主に中年期(45-64歳)以上で検討されることが多いです。
人工股関節全置換術の術後では、股関節脱臼や深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症などの合併症のリスクが高まるため、脱臼につながらない動きを守りながら下肢をできるだけ動かすように心がけましょう。
臼蓋形成不全になりやすい人・予防の方法
臼蓋形成不全になりやすい人や予防の方法はありません。しかし、乳児の場合は股関節脱臼、成人の場合は変形性股関節症への進行予防する必要があります。
乳児の予防法
乳児における股関節脱臼の予防では、乳児期の定期検診受診が大切です。
生後3ヶ月後の定期検診では、股関節検診が含まれており、臼蓋形成不全や股関節脱臼の有無を調べられます。
以下の項目に当てはまる場合は、臼蓋形成不全などの発育股関節形成不全や股関節脱臼のリスクが高いと言われています。
股関節の開きに左右差がある、向き癖のある方向と反対側の股関節の開きに制限がある
太ももや鼠径(足の付け根)の皮膚の溝が非対称
同一家系内に股関節疾患の家族歴がある
女児である
骨盤位分娩(逆子)
秋冬出生児(足を伸ばした状態のまま衣服でくるむことで脱臼になりやすい)
成人の予防法
成人では、下肢の筋力をつけることが変形性股関節症の予防に効果的です。
筋力がつくことで股関節痛を軽減できるため、無理のない程度に運動習慣を続けましょう。
肥満になると股関節に大きな負担がかかり、変形性股関節症を悪化させる可能性があります。
BMI25未満の体重を維持できるよう暴飲暴食を避けた規則正しい食事なども生活習慣に取り入れましょう。
関連する病気変形性股関節症
先天性股関節脱臼
深部静脈血栓症
肺血栓塞栓症
参考文献
日本整形外科学会
臼蓋形成不全の早期発見と予防
変形性股関節症診療ガイドライン
整形外科と災害外科「変形性股関節症におけるMRI所見」
乳児健康診査における股関節脱臼二次健診の手引き
配信: Medical DOC
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