監修医師:
高藤 円香(医師)
防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科
結節性痒疹の概要
結節性痒疹(けっせつせいようしん)は、慢性的な皮膚疾患であり、激しい痒みを伴う硬い結節が皮膚に形成される特徴的な症状です。この疾患は長期間にわたって症状が持続し、生活の質に大きな影響を及ぼす可能性があります。結節性痒疹の発症機序は不明ですが、リンパ球や好酸球の増加がみられるため、これらの物質が原因で痒みを誘発していると考えられます。
結節は主に四肢伸側に現れますが、体幹などの広範囲に発症することもあります。結節の大きさは通常1㎝程度で、表面は粗造(そぞう)で硬く、掻くことによる擦過傷や痂皮(かひ)形成が見られます。結節性痒疹は、持続的な痒みと外見上の問題から、心理的なストレスをもたらすことも少なくありません。
この疾患は、あらゆる年齢層で発症する可能性がありますが、中年以降の成人に多く見られる傾向があります。
結節性痒疹の原因
結節性痒疹は、複雑な病態を持つ慢性皮膚疾患であり、その発症メカニズムは多岐にわたります。アレルギー反応、アトピー性皮膚炎、肝障害、ストレス、感染など、さまざまな要因が背景にあると考えられています。特に注目すべきは、慢性的な掻破(そうは)行動がもたらす影響です。持続的な掻破により皮膚の神経終末が過敏になり、さらなる痒みを引き起こす悪循環が起こります。この悪循環は皮膚バリア機能の低下を招き、外部刺激に対する感受性を高めることで症状を悪化させます。
既存の皮膚疾患も結節性痒疹の発症リスクを高める要因となります。アトピー性皮膚炎や慢性蕁麻疹などの疾患を持つ患者では、結節性痒疹の発症率が高くなることが報告されています。これらの疾患に伴う皮膚の炎症や免疫系の変化が、結節性痒疹の発症を促進する可能性があります。
神経学的要因も結節性痒疹の病態に関与しています。末梢神経における痒み受容体の過敏化や、中枢神経系における痒み信号の処理異常が、持続的な痒みの感覚を引き起こすと考えられています。これらの神経学的変化は、慢性的な掻破行動によってさらに増強される可能性があります。
免疫系の機能不全も結節性痒疹の発症に重要な役割を果たしています。特定のサイトカインやケモカインの過剰産生が観察されており、これらの免疫メディエーターが皮膚の炎症反応を促進し、痒みを増強させると考えられています。T細胞やマスト細胞などの免疫細胞の異常な活性化も、結節性痒疹の病態形成に関与している可能性があります。
さらに、心理的要因も結節性痒疹の発症や症状の悪化に重要な影響を与えます。ストレス、不安、うつ状態などの精神的要因は、神経内分泌系を介して皮膚の炎症反応を修飾し、痒みの閾値を低下させる可能性があります。これらの心理的要因は患者の掻破行動を増加させ、症状の悪化を招く悪循環を形成することもあります。
配信: Medical DOC