身近な人の様子が、いつもと違うと感じたことはありませんか?以前と比べて元気がなかったり、仕事のミスが多くなったりなどうつ病は行動の変化として現れることが多い症状です。そのため、早期に気付くことで回復のチャンスが広がります。
この記事では、うつ病の方がとる行動や対処法について詳しく解説します。大切な人を支えるために、どのような行動がうつ病のサインなのかを知り、適切な対応を取れるようにしましょう。
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監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
うつ病の原因・症状
うつ病の原因を教えてください。
うつ病の原因は、ストレスや環境の影響だけでなく生まれつきの体質や家族から受け継いだ遺伝の影響も関係しています。脳のなかには感情や気分を調整するため、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質があり、このバランスが崩れると気分の落ち込みや不安を感じやすくなります。社会的な孤立や職場の問題、人間関係のトラブルなどの要因が重なると、精神的な負担が大きくなってうつ病を発症しやすいです。季節の変わり目やホルモンバランスの変化も影響を与えることがあります。秋から冬にかけて日照時間が減少すると、気分に影響を及ぼしてうつ状態が強くなるケースも見られます。うつ病の発症は多くの要因が複雑に絡み合うため、予防や治療には総合的なアプローチが必要です。
どのような症状が出ますか?
うつ病の主な症状として、持続的な気分の落ち込みや意欲の低下・睡眠障害・食欲の変化・集中力の低下がよくみられます。身体的な症状は、頭痛や胃痛などの体調不良です。日常生活では、仕事や学業、人間関係に影響を及ぼすこともあります。興味や喜びを感じにくくなり、重度の場合、外出するのが億劫になることも少なくありません。長期間にわたって改善しない場合、ご自身で命を絶ちたいと考えることもあり、迅速な治療が必要です。うつ病は心だけでなく身体全体に影響を及ぼす病気のため、早期に専門の医師の診断を受けましょう。
うつ病になりやすいのはどのような人ですか?
うつ病は過度なストレスを感じやすい職場環境や家庭内での問題がある方など、特定の環境や条件に置かれた方に発症しやすい傾向があります。孤独を感じることが少なくない方や、感情を抑え込んでしまう方も、うつ病にかかりやすいです。家族にうつ病にかかったことがある方がいる場合、遺伝的要因によりうつ病にかかりやすいとされています。長期間にわたって強いストレスにさらされていて、解消する方法を持たない場合、心身が疲弊しうつ病を発症しやすくなるでしょう。また、真面目で責任感が強い方程プレッシャーを一人で抱え込みやすく、うつ病になるリスクが高いとされています。
うつ病と双極性障害の違いを教えてください。
うつ病と双極性障害は、異なる精神疾患です。うつ病は主に気分の低下が特徴ですが、双極性障害は気分が高揚する躁(そう)状態と落ち込むうつ状態を繰り返す病気です。双極性障害の方は躁状態のときに異常なくらい活発になり、寝ないでも元気に活動したり、衝動的に大きな買い物やギャンブルで散財したりなどの行動を取ることがあります。うつ病は持続的な気分の落ち込みが中心で、躁状態は見られません。うつ病と双極性障害では治療法も異なります。うつ病の治療では抗うつ薬が主に使われますが、双極性障害のうつ状態にうつ病の薬は効きません。そのため、双極性障害のうつ状態をうつ病と勘違いして、薬を飲んでもなかなか効かないことがあります。双極性障害の治療には、躁状態とうつ状態を安定させるための気分安定薬が用いられることが多いです。躁状態のときの本人は気分がよいためなかなか治療を受けてくれませんが、失業や家庭崩壊につながる恐れがあり、周りの方も悩まされることがあります。うつ病も双極性障害も、周りの方が早めに気付き、治療を開始することが大切です。
うつ病の人がとる仕事場・家庭での行動の特徴
うつ病の人がとる仕事場での行動の特徴を教えてください。
うつ病の方は集中力や注意力が低下し、普段は問題なくできる作業に時間がかかったり、ミスが増えたりすることがあります。また、仕事に対する意欲が低下し業務に対する興味や責任感を失い、パフォーマンスが大きく下がることがあります。他人とのコミュニケーションを避けたり対話を面倒に感じたりして、職場の人間関係にも影響が出やすいのも特徴です。ほかにも、遅刻や欠勤が増えることもあります。うつ病は、周囲の人の理解と協力が回復に向けての大きな一歩です。サインを見逃さず、職場としての適切な支援を行いましょう。
うつ病の人がとる家庭での行動の特徴を教えてください。
うつ病の方は、家庭内では会話や活動に積極的に参加しなくなり、孤立することが多くなります。これまで問題なく行っていた家事や育児などの、家庭内の役割をこなせないことも多いです。感情をあまり表に出さずに抑えてしまうため、家族との会話や関わりにもエネルギーを使いすぎて、疲れやすくなることもあるでしょう。家族は、ただ疲れているだけだと見過ごしてしまいがちです。放置すると症状が悪化する可能性があるため、こうした行動が続く場合は精神科医へ早めに相談しましょう。
うつ病の人の表情にも特徴がありますか?
うつ病の方は、表情にも特徴が見られることがあります。感情の起伏が少なく無表情に近い状態が続き、喜びや楽しみを感じにくいため笑顔が減ることもあります。目つきや視線がぼんやりとして、下を向いていることも少なくありません。顔全体から疲労感や無気力さが伝わる場合があります。表情の変化はうつ病のサインの一つです。本人が言葉で表現しにくい内面の苦しみを反映していることが多く、無意識に表れることもあります。本人が気付かないうちに病状が悪化することを防ぐためにも、早めに周囲の人が気付けるよう、表情の変化に注目しましょう。
配信: Medical DOC