「自然気胸」の初期症状はご存知ですか? 原因・なりやすい人の特徴を併せて医師が解説

「自然気胸」の初期症状はご存知ですか? 原因・なりやすい人の特徴を併せて医師が解説

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

自然気胸の概要

自然気胸(しぜんききょう)は、外的な障害が起きていないにも関わらず気胸が発生する疾患です。
気胸とは肺に穴が開いて空気が抜け、肺がしぼんでしまう状態で、肺の内部を構成する「肺胞」という小さな袋が破裂して、胸腔内(肺と胸壁の間)に空気が漏れ出し、肺が部分的または完全にしぼみます。

自然気胸は若い男性や、痩せ型の体型の人がなりやすい傾向があり、肺に基礎疾患がない場合でも発症します。
続発性自然気胸の場合、基礎疾患として肺気腫や肺結核などの肺疾患が関与することが多いです。
再発のリスクが高い疾患であり、病態によっては外科的な治療を必要とすることもあります。

自然気胸の原因

自然気胸は主に痩せ型の体形や喫煙、月経、遺伝性疾患、既存の肺疾患などによって、肺胞の表面に形成される「ブラ」「ブレブ」と呼ばれる小さな嚢疱が破裂することによって生じます。
ブラは肺実質内にできた嚢胞で直径1cm以上のもの、ブレブは胸膜内にできた嚢胞で直径1㎝未満のものを指します。

痩せ型の若年男性

自然気胸は痩せ型で高身長の若年男性に多く見られます。
通常、男性の身長が急激に伸びる時期は胸郭が上下方向に引っ張られますが、痩せ型の場合は内臓の成熟が遅く、胸郭の発達が追いつかなくなってブラやブレブができることがあります。
ブラやブレブはできてから数年以内に破れやすいこともあり、自然気胸は若年者で発症しやすくなります。

喫煙

喫煙によってブラやブレブの発生が促進され、自然気胸の原因になります。
タバコの煙に含まれる有害物質は肺胞の壁を破壊して気腫性変化を引き起こしたり、持続的な炎症により肺胞組織の脆弱化を招いてしまうからです。

急激な気圧の変化

飛行機での急上昇やダイビング時の浮上などによる急激な気圧の変化は、肺に負担をかけ、自然気胸を引き起こす原因です。
元々肺の表面にブレブやブラがある人は、気圧の変化により破裂して、自然気胸を発症しやすくなります。

月経随伴性気胸

女性の場合、月経が自然気胸の原因になる可能性があります。
子宮内膜症が胸腔に進展し、横隔膜や肺に病変ができると、月経時に繰り返し自然気胸が発生することがあります。

マルファン症候群

マルファン症候群は、結合組織に異常をもたらす遺伝性疾患であり、長身で痩せ型の体型や胸郭の異常が起こることが特徴です。
肺の組織が弱くなるため、ブレブやブラが形成されやすく、破裂して自然気胸につながります。

既存の肺疾患

肺気腫や肺結核、肺がんなどの肺疾患も自然気胸の原因になります。

肺組織が損傷を受けているため、治療が難渋しやすい特徴があります。

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