自然気胸の治療
自然気胸の治療は、重症度に合わせて治療が選択されます。
軽症の場合は胸腔内の空気が自然に吸収されるのを待つため、1~3週間は安静期間が必要になります。
針吸引法(シンプルアスピレーション)
針吸引法は、細い針を胸腔内に挿入して胸腔に溜まった空気を抜き取り、肺の再膨張を促す治療法です。
特に緊急時の症状を緩和させるために行うことが多く、根本的な治療ではありません。
後に再膨張性肺水腫や気胸の再発が起こる可能性もあるため、定期的なレントゲン撮影を行う必要があります。
胸腔ドレナージ
胸腔ドレナージ治療は、胸腔にドレーンチューブを挿入して体外に空気を排出し、肺を再び膨張させる治療で、肺が中等度以上虚脱している場合に行います。
立位で取った胸部X線写真で、虚脱した肺が肺尖部(肺の一番上部)から3cmあれば、ドレナージの適応だといわれています。
参考:レジデントのためのやさいイイ呼吸器教室/長尾大志/日本医事新報社/p242
ドレーンチューブが胸腔に挿入された後、専用の装置(チェストドレーンバッグ)に接続され、胸腔内に陰圧をかけて肺の膨張を促します。
胸腔鏡下手術
胸腔鏡下手術では破裂した肺胞や肺の表面に空気が溜まった部分の切除を行います。
胸腔鏡下手術は肋骨の間に数か所穴を開けて行うため低侵襲であり、比較的術後の回復が早いです。
術後の回復が早い一方、開胸手術に比べて再発率が高いとされています。
開胸手術
肺内の炎症性病変が多く、高度な癒着や多発ブラがある場合は開胸手術が選択されることもあります。
自然気胸のなかでも続発性気胸として他に疾患がある場合に選択される治療法です。
侵襲が高い手術ですが、直視下で気胸の原因を確認できるため、再発率が低い手術になります。
自然気胸になりやすい人・予防の方法
自然気胸になりやすい人は、高身長で痩せ型の若い男性といわれています。
喫煙している場合も自然気胸のリスクが高くなるため気を付けましょう。
月経随伴性気胸の場合、予防には排卵抑制剤が有効な場合がありますが、再発する可能性があります。
自然気胸の予防として、喫煙者の場合、禁煙が最も効果的な予防法として推奨されています。
自然気胸は再発しやすいため、一度発症した人は生活習慣を見直したり、肺に過度な負荷をかける作業を避けたりしましょう。
特に激しい運動や、気圧の変化が激しい活動(ダイビングや高山登山など)は避けてください。
関連する病気肺気腫
肺結核
間質性肺炎
参考文献
自然気胸に対する胸腔鏡手術昭和医学会雑誌/72巻/4号/p407-410
初発時に高度虚脱を呈する原発性自然気胸の手術適応日本呼吸器外科学会雑誌/37巻/1号/ p. 2-7
ソラシックエッグ®による自然気胸の外来治療の検討日本呼吸器外科学会雑誌/25 巻/1号/p. 007-012
続発性自然気胸における新たな術後合併症予測因子/日本呼吸器外科学会雑誌第36巻/第6号/p614-620
自然気胸患者における心的特性/日本歯科大学紀要/一般教育系, 35/p75-78
原発性自然気胸に対する脱気療法の前向き検討/日本呼吸器外科学会雑誌/第34巻/第4号/p196-199
レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室/日本医事新報社
配信: Medical DOC
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