二重まぶたの手術と眼瞼下垂の切開法は、とてもよく似ている治療です。眼瞼下垂の切開法は眼瞼下垂を治しつつ、二重にすることもできるため、「一体何が違うの?」と疑問を抱く人もいると思います。今回は、両者の違いについて、「メディカルプラスクリニック新宿」の林先生に解説していただきました。
監修医師:
林 和弘(メディカルプラスクリニック新宿)
産業医科大学医学部卒業。その後、北里大学医学部形成外科入局、都内美容クリニックで経験を積む。2008年、東京都新宿区に位置する「メディカルプラスクリニック新宿(旧・メディカルプラスクリニック)」の院長に就任。医学博士。日本形成外科学会専門医・指導医、日本美容外科学会(JSAPS)専門医。日本抗加齢医学会、日本頭蓋顎顔面外科学会の各会員。
眼瞼下垂の主な治療法
編集部
まず、眼瞼下垂について教えてください。
林先生
簡単に言えば、まぶたが開けづらく、垂れ下がってきて見づらくなる疾患のことで、詳しく言うと先天性と後天性があります。まぶたが垂れ下がる原因には様々ありますが、加齢を原因として発症する老人性(腱膜性)眼瞼下垂がほとんどです。加齢以外にも、外傷やコンタクトレンズが原因で若い人に起こることもあります。
編集部
加齢が原因というのは、どういうことでしょうか?
林先生
加齢による後天性の場合、ほとんどが腱膜性の眼瞼下垂です。まぶたを持ち上げる筋肉のことを上眼瞼挙筋と言い、この筋肉の延長にある挙筋腱膜という膜組織がまぶたに付着しています。この腱膜が長年使い続けたことにより痛んで伸びたり、付着部から外れてしまったりすることによって起きるのが老人性眼瞼下垂です。
編集部
どのように治療するのですか?
林先生
手術が唯一の治療となります。腱膜が付着部から外れていれば、元の位置へ戻して固定します。腱膜が加齢変化で伸びてしまったなら、長さを短縮して修復します。
編集部
もう少し具体的に教えてください。
林先生
最も一般的な手術は「挙筋腱膜前転法」と呼ばれる術式です。上まぶたを二重まぶたの皺に沿って切開し、痛んで伸びてしまった腱膜や外れてしまった腱膜を、本来の付着部である「瞼板」という、まぶたの裏側にある組織に適度な長さで縫いつけて固定します。これによりまぶたが開きやすくなり、覆い被さるなどの見えづらさも改善され、半永久的な治療効果を得ることができます。
眼瞼下垂の手術をすると二重になる?
編集部
眼瞼下垂の手術をすると、二重に戻るのですか?
林先生
眼瞼下垂の症状が強くなると、二重ラインの引き込みが弱くなり、代償として眉毛を上げる動作によって本来の二重の幅はより広くなります。手術により挙筋機能が改善することで、二重のラインを目立たせることが可能です。また、加齢変化で腱膜が痛む(伸びる)と同時に、まぶたの皮膚にたるみが生じていることが多いので、余剰皮膚の切除を一緒におこなうことで、はっきりとした印象の目元になります。
編集部
一重まぶたの人は、眼瞼下垂の手術をすると二重まぶたになるのですか?
林先生
もともと一重まぶたや奥二重の人も、眼瞼下垂の手術によって、はっきりとした二重まぶたに仕上げることは、切開線のデザイン次第で可能です。また、二重の幅のデザインや最終的な皮膚縫合の仕方によっては、一重まぶたのままおこなうことや奥二重にすることも可能です。
編集部
眼瞼下垂の手術をすると二重まぶたがくっきりするということは、二重まぶた手術と同じですか?
林先生
いいえ。「眼瞼下垂の手術と二重まぶた手術は別物」と考えた方がいいでしょう。まず前提として、挙筋機能が十分でないと、しっかり引き込みのあるくっきりとした重瞼ラインはできません。眼瞼下垂手術は目(まぶた)を開ける機能改善のための手術で、その結果として二重がくっきりします。一方で、二重まぶた手術は、あくまで二重の幅を変えるだけの整容的な手術となります。もちろん二重まぶた手術の適応になる人は、挙筋機能が十分あり、ラインの引き込みは十分なためくっきりした二重になるはずです。
編集部
二重まぶた手術は、どのようにしておこなわれるのですか?
林先生
二重まぶた手術には、埋没法と切開法という2種類があります。埋没法は皮膚切開を最小限にして、皮膚を糸で留めて二重を作る方法です。一方で、切開法は希望の二重ラインに沿って皮膚を切開し、組織を縫合することで二重を作ります。
編集部
これらの二重まぶた手術では、眼瞼下垂は治らないのですか?
林先生
基本的に二重ラインを作成するだけの手術操作では、眼瞼下垂の症状は改善しません。あくまで腱膜の長さの調整・修復が必要です。
配信: Medical DOC