多くの顧問先を持つ社会保険労務士法人ジェイズ事務所の代表・片桐めぐみさんは、「確かに生活保護を受けている方は、医療費の助成を受けることはできません。しかし、それは元々生活保護受給者の方は、医療費の本人負担がないためです」と、話します。
親が問題を抱えていても子どもは守られる?
では、そのほかの妊娠・出産、子育てに関する助成制度はどうでしょうか?
「たとえば東京都の場合、中央区が実施している妊婦さん向けの『タクシー利用券』や『区内共通買物券』は、生活保護や住民税の未納などは関係なく助成されます。また、医療費の助成については、練馬区は住民税や国民健康保険料を未納だったとしても、子どもは助成対象です。親が何かしらの支払い(納付)ができていなかったとしても、子どもは守られるということになります」(片桐さん、以下同)
片桐さんによると、認証保育園の保育料の助成については、葛飾区は住民税を未納・滞納していたとしても、保育料を支払ってさえいれば、助成を受けることができるそうです。ちなみに、私立幼稚園の保育料助成についても同様とのこと。
「仮に住民税を未納・滞納していても助成は受けられる可能性が高いのですが、滞納への督促や追徴課税、給料差し押さえなど、いろいろあるので、もし、経済面で危機的状況になっているようであれば、何らかの請求が送られてくる前に、早め早めに役所に相談することがベストです」
とはいえ、上記はあくまでも一例にすぎません。
たとえば、北海道滝川市の場合、私立幼稚園への入園・保育料などの助成の受けるには、市民税の完納が条件になっています。住民税を納付している住民との公平性を保つために、滝川市のような条件がある自治体はほかにもあり、必ずしも助成を受けられるとは断言できないのが実情です。
また、助成制度には、「所得制限」があることも多く、家庭の所得額によっては、“助成を受けられない”“助成額が減額される”といったこともあるので注意が必要でしょう。
働くママは事前に会社に確認・説明しよう
各自治体が行っている助成制度については、お住まいの地域に確認するべきですが、それと同様に、働くママは会社への確認も必要だと片桐さんはいいます。
「出産手当金や育児休業手当など、会社経由で補助を受ける際は、そういった制度を知らない会社もあるので注意が必要です。経営者や人事などに“こういった制度がありますよね”と事前に確認や説明をしておくといいと思います」
補助を受けられるといっても、給料の満額が支給されるわけではないので、“大体どのくらいもらえるのか”“支給されるサイクルはどのくらいか”といったシミュレーションをしておく。さらに、役所が混んでいると給付金の支給日が遅れる可能性もあるので、余裕のある計画を立てておくと安心だそう。
「助成や補助を受けられるか心配…」そう悩んでいても何も解決しません。不安要素を抱えているなら、まずは早めに相談・確認をしてはいかがでしょうか。
(文・奈古善晴/考務店)
※記事内容は2017年5月12日現在の情報です