腸炎の前兆や初期症状について
感染性腸炎の主な症状は腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、発熱です。細菌性腸炎は原因菌によって症状が異なり、それぞれ以下のような症状を呈します。
腸管出血性大腸菌 O157:
激しい腹痛と水溶性下痢で発症し、その後に血便も呈します。約10% は発症 1週間後 に溶血性尿毒症症候群を続発して急性腎不全、血小板減少、溶血性貧血、脳症を生じることがあり、重篤な経過を辿ると死に至る場合もあります。
サルモネラ菌:
典型的な感染性腸炎の症状と同じで、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、発熱を呈します。
カンピロバクター:
水溶性下痢、発熱、腹痛が見られ、1週間 程度続きます。対症療法で症状が改善することが多いですが、菌血症や髄膜炎、腹膜炎を生じることもあります。
赤痢菌:
発熱、腹痛、泥状〜水様の便、テネスムス (便意はあっても排便しようとすると出ない) が見られ、後に膿粘性の血便が見られます。
コレラ菌:
「米のとぎ汁様」と言われるような水様性の下痢を生じます。発熱はなく、脱水が顕著に表れます。
チフス菌・パラチフス菌:
高熱で発症します。脾腫や全身に 数mm の赤い斑点も見られることがあります。進行すると腸出血や腸穿孔を生じることもあります。
黄色ブドウ球菌:
激しい吐き気や嘔吐、強い腹痛、下痢を生じます。まれに発熱やショック症状を伴うこともありますが、通常は 1日 か 2日間 で治ります。
薬剤性腸炎では薬剤服用後数日で水様性の下痢や腹痛、血便を発症します。潰瘍や腸の狭窄をおこすこともあり、重症化すると腸穿孔や敗血症のリスクが高まります。
放射線腸炎は急性型と慢性型に分かれます。急性型では、放射線治療中や直後 (照射後 3か月以内) に腸粘膜の発赤や浮腫、出血が現れ、慢性型は6か月~25年わたって見られ、血管障害による潰瘍や狭窄・瘻孔形成が見られます。
また、慢性腸炎では腹痛や下痢がゆるやかに発症し長期間持続します (参考文献 1) 。
腸炎の検査・診断
腸炎の診断は病歴と症状、検査結果を総合的に評価して行われます。さらには、病歴と症状のみで診断がつけられることもあります。
例えば急性ウイルス性胃腸炎の診断は、 1週間 以内に急速に発症する特徴的な下痢症(1日 3回 以上または 1日 200g 以上の便)の病歴があり、吐き気、嘔吐、発熱などの症状と軽度で腹部全体に広がる腹部圧痛が見られれば診断されます (参考文献 3) 。
配信: Medical DOC